トランプ関税後の「次なる標的」に備えよ 日本企業が取るべき3つの対応製造マネジメントニュース(1/2 ページ)

米国の関税違法判決と新措置発動を受け、通商環境は激変している。EY Japanは、こうした環境下で日本企業が取り組むべき関税削減やサプライチェーン再構築など、3つの実務対応策を解説した。

» 2026年04月07日 07時15分 公開
[安藤照乃MONOist]

 EY Japanは2026年4月3日、「トランプ関税後の日本企業の対応」と題したメディア勉強会をオンラインで開催した。EY税理士法人 パートナー インダイレクトタックス部 リーダーの大平洋一氏が、米国の最新の通商政策の動向と、日本企業が講じるべき関税コスト削減対応や、サプライチェーンの強靭化対策について解説した。

IEEPA関税に「違法」判決、米政権は代替措置を発動

 米国の通商政策が転換点に直面している。米国最高裁判所は2026年2月20日、米国 大統領のドナルド・トランプ氏が発動した国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく10〜18%の追加関税措置について、賛成6、反対3で「違法」と判断を下した。この判決を受け、米国政権はIEEPAに基づく関税の徴収停止を余儀なくされた。

米国最高裁判決の概要 米国最高裁判決の概要[クリックで拡大] 出所:EY Japan

 しかし、米国政権は直ちに代替措置を講じている。判決直後の同年2月24日に通商法第122条を新たに発動し、全輸入品に対して再び一律10%の関税措置を導入した。同条項は国際収支の不均衡是正を目的とした暫定措置であり、最大150日間にわたり最大15%の関税を課すことができる。この規定に基づき、現在の一律10%関税措置は期限となる7月24日頃まで継続される見通しだ。

EY税理士法人の大平洋一氏 EY税理士法人の大平洋一氏

 さらに第122条の発動と並行し、通商法第301条、第232条に基づく個別産業への調査を開始した。調査対象には、自動車部品、医薬品、ロボティクス、ドローン、風力タービンなど、日本の製造業にも影響を及ぼす品目が含まれている。大平氏は、「第122条に基づく一律関税が終了した後は、特定の産業や品目を狙い撃ちするターゲット型の関税政策へ移行していく公算が大きい。企業は、自社製品が次なる関税の標的となるリスクを前提とした対応が必要だ」と指摘した。

通商法第232条、第301条に基づいて発動された関税 通商法第232条、第301条に基づいて発動された関税[クリックで拡大] 出所:EY Japan
通商法第232条で調査を進めている対象製品 通商法第232条で調査を進めている対象製品[クリックで拡大] 出所:EY Japan

還付手続きが開始、期限は「確定清算から180日」

 米国最高裁判所は過去に徴収した関税の還付を命じる判断までは下さなかったものの、下級審にあたる国際貿易裁判所は2026年3月上旬、米国税関と国境警備局(CBP)に対して、還付手続きを開始するよう指示を出した。

 通常の還付手続きは、輸入申告ごとに個別に行うのが原則だ。 しかし、今回のIEEPA関税は対象範囲が極めて広く、対象となる輸入データは膨大な数に上る。そこでCBPは現在、輸入者単位でまとめて処理できる独自の還付用電子システムを新たに構築している。この新システムは4月末から5月にかけて稼働する予定であり、CBPは申請から45日以内での審査および電子的な還付処理の完了を目指している。

米国の通関手続き 米国の通関手続き[クリックで拡大] 出所:EY Japan

 実務上の還付手続きは、米国の通関制度における「確定清算(リクイデーション)」を起点として、段階的に実施される見通しだ。まだ確定清算を迎えていない直近の輸入分が「第1フェーズ」の対象として優先的に還付処理し、確定清算が完了した過去の輸入分が「第2フェーズ」の対象となる仕組みだ。

 しかし、大平氏はこの点について、「確定清算から180日を超過してしまうと、原則過去の申告にさかのぼれず還付請求権を喪失するリスクが高い。企業はCBPの新システムの稼働を待つのではなく、直ちに事前準備を進める必要がある」と指摘する。具体的には、自社の米国法人が保有するACE(米国輸出入システム)データを早急に入手して分析し、フェーズごとの該当データと還付請求金額を正確に算出しておくことが求められるという。

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