小寺 バイノーラル向けに設計するというのは、普通のイヤホンと何が違うんでしょうか。
森氏 私が営業として聞いてる範囲ですと、バイノーラルで録音した作品を通常のイヤホンで再生すると、特に高域のところで違和感があるといわれます。特にASMRの音声だと、耳の近くでささやいたりするときの「さしすせそ」の雑音であったり、口がぴちゃぴちゃいう音であったりとか、耳障りな音が多くなります。そこがASMRの良さを阻害していた要因になっていました。そこを克服したモデルだと聞いています。
小寺 ワイヤレスイヤホンは、昨今はプロセッサとソフトウェアが介在するので、音をソフト的に調整することが可能なわけです。でも、E500のようなシンプルなワイヤードのイヤホンは、物理的なところ、例えばドライバーの特性で調整しないといけないので、相当開発は大変じゃないかと思います。
森氏 今おっしゃっていただいたことが、まさに弊社の核の部分になるんです。私たちは今もマニア向けとしてイヤホンだと大体30万とか40万とか、ヘッドホンでも50万近くのフラッグシップ製品を販売させていただいたりしています。やっぱりドライバーを一から設計して製造しているというところが、私たちの本当に強みだと思ってます。
小寺 2021年に「COTSUBU for ASMR」という商品が出ますけど、この時にはすでにASMRにフォーカスしていこうという方針は決まっていたということですか。
森氏 ASMRに対して、E500をワイヤレス化してくれという声がすごく多くて。それで2021年7月に発売した「COTSUBU」というワイヤレスイヤホンをベースに「for ASMR」という製品を開発していくことになったんです。
これも後になってわかったことなんですが、ケーブルがなくなったことでASMRと睡眠が深く結びついて、多くの方はASMRを聞きながら寝るんだということが分かりました。「COTSUBU」という製品が非常に小さく、いわゆる「寝ホン」に最適だっていうところで、それを使って「COTSUBU for ASMR」の開発につながっていったイメージですね。
小寺 その後、2025年には「ZE500 for ASMR」というモデルが出てくるわけですが、ポイントは「圧力分散」ということだと思います。この圧力分散は、ASMRに対してはどのような効果があるんでしょうか。
森氏 ASMRの場合、睡眠時に長時間装着します。耳の中に音が出るということは振動板が動きますので、圧力が高まるわけですよね。その高まる圧力を適切に分散すると、鼓膜への影響が少ないということになります。
またイヤホンは、実は装着するときに1番耳の中の圧力が高まって、外すと負圧で引っ張られてしまうことが起きますので、鼓膜に対しても影響があります。同じくイヤホンの内部のドライバーの方にも負荷がかかりやすい状態になるのは、実はイヤホンの付け外しの時なんです。
そこで、適切にその内部の圧力を調整するベントのようなものを設計しました。ただこれは音にも影響してしまうので、音質に悪い影響を与えないようにうまく設計していくというのが、ZE500 for ASMRで搭載した「ASMRポート」になります。
小寺 これは「COTSUBU」よりもさらに小型になったことで、寝ホンとしてもかなり売れているようですね。
森氏 そうですね。ASMRはすごく広い意味でも使われてますけども、お話を聞くと大体の方が寝ながら何か聞いています。ラジオとかオーディブルの朗読であったりとか、あとYouTubeの聞き慣れた配信であったりとか。何らかの音声コンテンツを聞きながら寝てる人というのは、実はASMRを中心としてずっと幅広くいらっしゃるんですよ。このZE500 for ASMRは、おそらくASMRを超えてかなり広いお客さまにご支持いただいてるんじゃないかなと思います。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
製造マネジメントの記事ランキング
コーナーリンク