中国自動車メーカーが目指す知能化とスマート化、2026年からAIDVの競争が始まる和田憲一郎の電動化新時代!(60)(2/3 ページ)

» 2025年12月24日 06時00分 公開

ユーザーと対話する「パーソナルAIアシスタント」

 スマート化の実装技術として、ドライバーの次なる思考や行動を予測し、対話を通じて適切な提案を行う「パーソナルAIアシスタント」がある。ある意味、従来の運転支援機能を超え、ドライバーに寄り添う相談役もしくは相棒ということができる。

 例えば、2025年5月に販売開始されたNIOの新型「ET5」には「NOMI Mate」と呼ばれるAIアシスタントがインストルメントパネル上に設置されている(図2)。NOMI Mateは、マスコットが340度水平方向に回転可能であり、外の世界を観察したり、じゃんけんをしたり、リアルなインタラクションを可能にしている。さらに、運転関係では、ドライバーの要請により、リアルタイムのルート設定案内、充電施設の空き状況など、充電に関する多くの要素を分析し、ドライバーの最適充電環境も提供可能となっているようだ。まさに、上述のドリームカー:ナイト2000のAIであるK.I.T.Tを想起させる。

図2 図2 NIOの「NOMI Mate」[クリックで拡大] 出所:NIO

 他の事例では、Li Autoが「理想同学(通称:理想さん)」、Xpengは「小P(Xiao P、シャオP)」と呼ばれるパーソナルAIアシスタントを開発/搭載しており、いずれもNIOのNOMI Mateと類似した機能を備えている。

知能化/スマート化とSDVの関係性

 以上の事例を踏まえると、中国自動車メーカーが推進する知能化/スマート化については正式な定義は不明であるものの、筆者は次のように推察する。

  • 知能化:クルマが、AI利活用により「考える」「判断する」ようになること。つまり、AI技術の進化により、クルマが頭を使って自律的に考え、判断し、走行することを目指しているのではないだろうか
  • スマート化:クルマが、AI利活用によるインタフェースの進化により、賢く便利になること。これは、会話能力や走行に関するルート情報、突発的な情報を入手してクルマがどんどん賢くなり、まるで相談役か相棒の役割を果たすことを目指している

 そして、知能化/スマート化とSDVとの関係性は、相互補完的なものではないだろうか。つまり、知能化/スマート化は、クルマの「頭脳」に相当し、認知/推論/意思決定といった高次機能の実現を通じて知的判断能力の向上を目指す。一方、SDVは、頭脳的な部分もあるが、「骨格(プラットフォーム)、筋肉(アクチュエータ)、神経系(通信/制御系)」といった「身体」に相当する構造をソフトウェアによって最適化する技術であると思われる。

SDVからAIDVへ

 さらに、ついにここまで来たかという事例も出てきている。Xpengは2024年11月、世界初のAIDV(AI Defined Vehicle:AI定義型車両)である「P7+」を発表した(図3、4)。これは、従来のSDVに対し、ソフトウェアのみならずAIが車両の定義に関与するという新たな概念である。

図3 図3 「Xpeng P7+」の発表会の様子[クリックで拡大] 出所:Xpeng
図4 図4 「Xpeng P7+」のコックピット[クリックで拡大] 出所:Xpeng

 P7+発表の席で、Xpeng会長兼CEOの何小鵬氏は「従来の高級車はデザインや装備で定義されてきたが、AI定義車両の時代において真の高級性は知能技術と不可分である」と述べている。

 これから考えるに、XpengはAIDVこそ将来の方向性だと考えているのではないだろうか。なお、P7+について紹介すると、知能運転とコックピット機能の両方に大規模AIモデルを組み込んだことが特徴である。

 知能運転では、ADAS機能として、Xpeng独自のAIホークアイ視覚ソリューションを搭載し、E2EのAI大規模モデル活用により、周囲環境の理解向上を図り、高度な運転支援機能を提供している。また、スマートコックピットには、Xpeng独自の大規模AI「X-GPT」モデルと「Qualcomm製コックピットチップ」を搭載し、高度で自然な音声対話が対応可能となっているようだ。

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