ロボットとAIで細胞医療の「死の谷」を克服、アステラスと安川出資の新会社が始動ロボット開発ニュース(2/3 ページ)

» 2025年10月22日 06時15分 公開
[朴尚洙MONOist]

2017年から協業を重ねてきたアステラス製薬と安川電機が出資

 セラファ・バイオサイエンスの資本金は45億円。アステラス製薬が60%、安川電機が40%出資している。設立日は2025年9月29日で、代表取締役社長にはアステラス製薬でCMCディベロップメント 原薬研究所 所長 つくばバイオ研究センター センター長を務めた山口氏が就任した。取締役は山口氏を含めて5人で、取締役CScO(研究担当役員)にアステラス製薬出身の蒲原正純氏、取締役CTO(技術担当役員)に安川電機出身の清水圭氏が就き、非常勤取締役をアステラス製薬 プライマリ・フォーカス・リード Blindness&Beyondの鈴木丈太郎氏と、安川電機 ロボット事業部長 兼 ロボット事業部 ロボット技術部長の岡久学氏が務める。

セラファ・バイオサイエンスの会社概要 セラファ・バイオサイエンスの会社概要[クリックで拡大] 出所:セラファ・バイオサイエンス
アステラス製薬と安川電機、セラファ・バイオサイエンスの関係 アステラス製薬と安川電機、セラファ・バイオサイエンスの関係[クリックで拡大] 出所:セラファ・バイオサイエンス

 セラファ・バイオサイエンスに出資するアステラス製薬と安川電機は2017年から、医薬品の研究開発における熟練作業を自動化する取り組みで、安川電機傘下のロボティック・バイオロジー・インスティテュート(RBI)が開発した研究用の汎用人型ロボット「まほろ」を用いた取り組みで協業してきた。一般的な産業用ロボットが特定の用途に特化して生産性を高めているのに対して、まほろは研究者が使う器具を使ってさまざまな実験ができる汎用性を最大の特徴としている。また、作業プロセスや作業結果がデジタルデータとして記録されるので、何度でも同じ作業を正確に繰り返すことができる。

「まほろ」を用いた医薬品の研究開発における熟練作業自動化の取り組み 「まほろ」を用いた医薬品の研究開発における熟練作業自動化の取り組み[クリックで拡大] 出所:セラファ・バイオサイエンス

 セラファ・バイオサイエンスが手掛ける次世代細胞製造プラットフォームは、まほろを用いたアステラス製薬と安川電機の取り組みが基盤になっている。細胞医療製品の研究と製造プロセス研究、GMP製造の間で、それぞれの工程で得た知見やノウハウの技術移転に1年〜1年半かかり、場合によっては再現できないこともあり、これが死の谷の要因となっていた。しかし、各工程でハードウェアとして同じまほろを使用し、知見やノウハウとなる作業プロセスをデジタルデータとして共有すれば、技術移管に時間はかからずスムーズに進められる。

セラファ・バイオサイエンスの次世代細胞製造プラットフォーム セラファ・バイオサイエンスの次世代細胞製造プラットフォーム[クリックで拡大] 出所:セラファ・バイオサイエンス

 また、まほろを用いた研究開発では作業プロセスのデジタルデータを基にAIによるプロセス最適化も可能になる。例えば、理化学研究所の実証実験では従来の方法で5年かけたプロセス開発の期間をまほろとAIの組み合わせによって半年に短縮できることを確認した。アステラス製薬では、NK細胞の収率について、まほろとAIの組み合わせで従来のプロセスを最適化したところ50〜100倍に向上できたとしている。山口氏は「細胞医療製品の開発期間を劇的に短縮することで、1製品当たり約40億円の利益につながることが期待される」と強調する。

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