東京大学らは、シリコン空孔中心の電子スピン量子ビットに対して反復的な量子フィードバック制御を行い、量子情報の流れを活用することで、熱力学的エントロピーを減少させる「マクスウェルのデーモン」を実証した。
東京大学とハーバード大学は2025年8月28日、シリコン空孔中心の電子スピン量子ビットに対して反復的な量子フィードバック制御を行い、その過程で生じる量子情報の流れを活用することで、熱力学的エントロピーを減少させる「マクスウェルのデーモン」を実証したと発表した。
同研究では、レーザー光による量子状態の読み出し、FPGAによる信号処理、マイクロ波による量子操作からなるフィードバック制御を、量子ビットのコヒーレンス時間より十分短いスケールで反復。測定で得られた情報量に応じてエントロピー生成が抑制されることを定量的に確認し、量子情報流を取り込んだ拡張熱力学第二法則および拡張ゆらぎの定理を実験的に検証した。
さらに、直近の測定結果だけに基づくマルコフ的な制御と、過去の測定結果の履歴も利用する非マルコフ的な制御を比較。非マルコフ的フィードバックでは、マルコフ的フィードバックの下限を超えてエントロピー低減が進み、量子制御の熱力学的な性能向上を明らかにした。
この成果は、熱力学的に高効率な量子制御の実現や、複雑な因果構造を持つフィードバックを利用した量子熱機関の設計につながると期待できる。今後は反復的なフィードバック制御を含む量子熱機関や量子バッテリーの性能評価のための理論的な基盤となり得る。
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