電池人材が足りない! パナソニックエナジーが奨学金給付などで育成へ製造マネジメントニュース(1/2 ページ)

パナソニックエナジーは、電池産業の発展に貢献する人材の育成を目的とする「MIRAI奨学金」を2024年度に続き2025年度も実施すると発表した。

» 2025年04月08日 08時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

 パナソニックエナジーは2025年4月7日、電池産業の発展に貢献する人材の育成を目的とする「MIRAI奨学金」を2024年度に続き2025年度も実施すると発表した。MIRAI奨学金では、電池事業に関連する分野を研究する理系学生の大学3年生もしくは大学院1年生を対象に、年間50万円を最長2年間給付する。同日から募集を開始する2025年度も、2024年度と同じく20人を募集する方針である。

 MIRAI奨学金は、奨学金の給付によって対象の学生がこれまで以上に研究活動に集中できる環境を提供することで、今後の電池産業の発展に大きく貢献が期待できる人材育成を支援する狙いがある。また、パナソニックエナジーで活躍する技術者コミュニティーとの定期的な接点を持つことにより、電池メーカーで働く面白さを知り、対象学生のキャリアビジョンの形成も支援する。あくまで、「電池産業の発展に貢献する人材の育成」が最大の目的であり、パナソニックエナジーへの入社は第一義としていない。

 応募資格は、電池事業に関連する分野を研究する理系学生の大学3年生もしくは大学院1年生であることに加えて、パナソニックエナジーの技術者のコミュニティー活動(約5時間のプログラムを年2回、その他不定期にイベントを開催予定)に参加できることとなっている。

2025年度(第2期)のパナソニックエナジーMIRAI奨学金の概要 2025年度(第2期)のパナソニックエナジーMIRAI奨学金の概要[クリックで拡大] 出所:パナソニックエナジー

合格倍率は9倍、初年度から大きな手応え

 リチウムイオン電池を発明し、かつては国別シェアでもトップを走っていた日本だが、現在主要なメーカーは中国や韓国が中心になっている。EV(電気自動車)と同期する形で急速に市場を拡大する車載リチウムイオン電池で、日本国内からグローバルに大きな存在感を発揮している数少ないメーカーがパナソニックエナジーだ。2023年度の売上高9159億円のうち約66%を車載事業が占めており、今後も車載事業を中心に事業を大きく成長させていく方針である。

パナソニックエナジーの事業概要 パナソニックエナジーの事業概要。売上高の約66%、調整後営業利益の約72%を車載事業が占める[クリックで拡大] 出所:パナソニックエナジー

 そんなパナソニックエナジーにとって課題になっているのが電池人材の育成だ。一般的に、大学では電池そのものの研究を行うことはあまりないため、新卒入社の対象となるのは電池開発と関連する材料系や化学系の学生が多い。「MIRAI奨学金は、電池に興味のある優秀な学生との接点を早い段階から持つことが狙い。従来の新卒入社募集とは異なる形での接点でもあり、初年度の2024年度から手応えを感じている」(パナソニックエナジーの人事担当者)という。

 2024年度の奨学生は181人の申し込みがあり合格倍率は約9倍だった。20人の内訳は男性5人/女性15人、大学3年生1人/大学院1年生19人となった。理系学生は男性の比率が極めて高く、申し込みも67%が男性だったが、合格者の75%が女性となったのは興味深いところだ。

 奨学生向けには、2024年11月に第1回、2025年1月に第2回のプログラム(5時間)を実施した。第1回はパナソニックエナジー 副社長執行役員 CTOの渡邊庄一郎氏などの講話や、若手社員による職種紹介、社員が語る電池事業の面白さなどを伝えるワークショップ、第2回は同社 副社長執行役員 モビリティエナジー事業部長の高本泰明氏などの講話に続き、「社会に与えたいインパクトを探る」をテーマにしたワークショップを行った。

奨学生のイベント/プログラム 奨学生のイベント/プログラム[クリックで拡大] 出所:パナソニックエナジー

 2025年3月には成果報告会を行っており、奨学金給付後からのプログラムを経ての学びや、今後の電池業界への貢献/ロードマップなどを奨学生が発表している。「奨学金のおかげでアルバイトを減らして学会発表が可能になった、海外学会の発表で受賞することができたなどの報告があった。また、奨学金をきっかけに4人が博士後期課程への進学を決めるなど、電池人材の育成に貢献できているのではないか」(同担当者)。

奨学生のイベント/プログラムの様子 奨学生のイベント/プログラムの様子[クリックで拡大] 出所:パナソニックエナジー

 なお、20人の奨学生のうち4~5人がパナソニックエナジーへの入社を検討している。「今後も奨学生の2~3割の入社を目指していきたい。また、直接当社に入社しなくても、例えば自動車メーカーなどに就職するのであればパナソニックエナジーにとって新たな商機につながる可能性もある。博士後期課程に進学する場合は、共同研究を始められるかもしれない」(同担当者)としている。

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