本連載では、あらためて中小製造業がIoT導入を進められるように、成功事例を基に実践的な手順を紹介していく。第3回は「IoTによる製造工程管理の強化」をテーマに、ラズパイを活用した生産管理指標の可視化手順と管理のポイントについて解説する。
前回はIoT(モノのインターネット)を導入する目的と、IoT導入を成功に導く上での経営者のあるべき姿勢について説明しました。
IoT化を進める際には「卵が先かニワトリが先か」の議論に陥りがちです。卵が先のアプローチで体系的に工場管理の全てをデジタル化してもシステムを導入するまでに何年もかかりますし、せっかくシステムができても現場が使いこなせず全く新システムが定着せず、以前までに慣れたやり方に戻るケースが多くあります。
だからこそ、ニワトリが先のアプローチを取り、まず現場にハードルが低く効果が出やすい箇所に対してIoT導入を行い、その効果を現場の方に認識してもらうことが重要です。そこで今回は「IoTによる製造工程管理の強化」をテーマに、ラズパイを利用した生産管理指標(可動率、稼働率、不良率)の可視化手順と管理のポイントについて解説します。
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国内中小製造業では、昭和の時代に確立した生産日報とグラフ化による現場管理を行っているのが一般的です。生産日報には以下の内容を記録しています。
これら生産日報の情報を収集して以下のグラフを作成しています。
この生産日報とグラフ化による現場管理において、以下のような問題が発生しています。
これらの問題を解決するためにIoT導入と現場改善の両面から以下のような問題解決を図ることが重要です。
ラズパイはRaspberry Pi(ラズベリーパイ)が正式名称でArmプロセッサを搭載したシングルボードコンピュータです。イギリスのRaspberry Pi Foundation(ラズベリーパイ財団)によって教育用コンピュータとして開発されていますが、産業用でも多くの利用実績があります。
ラズパイの特徴は以下の通りです。
最低機種のPico(Raspberry Pi Pico)は数千円から購入可能でかつ、3B(Raspberry Pi 3 Model B)、4B(Raspberry Pi 4 Model B)、5B(Raspberry Pi 5 Model B)とより高機能な機種が市場投入されておりバリエーションが豊富。
ラズパイ使用例の情報がインターネットに多数掲載されているため、ある程度自力で開発していくことが可能。
標準機能でWi-Fi接続、画面出力(HDMI)、有線LAN接続(イーサネット)、Bluetooth接続が可能でかつ、カメラ接続も簡単に拡張可能なため、アナログ、デジタルデータだけでなく画像収集などの多彩な情報収集が可能。
高級プログラミング言語のPython(パイソン)やOpenCVなどの画像解析ライブラリなど、無償で誰でも自由に改変や再配布が可能なOSS(オープンソースソフトウェア)による最新技術を活用したアプリ開発が可能。
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