本連載第100回で、2024年パリ夏季オリンピック・パラリンピック競技大会におけるAI戦略動向を取り上げたが、既に4年後の2028年ロサンゼルスオリンピック・パラリンピック大会に向けて、新たな動きが始まっている。
本連載第100回で、2024年パリ夏季オリンピック・パラリンピック競技大会におけるAI(人工知能)戦略動向を取り上げたが、既に4年後の2028年ロサンゼルスオリンピック・パラリンピック大会に向けて、新たな動きが始まっている。
国際オリンピック委員会(IOC)は、2017年7月12日、2024年夏季オリンピック・パラリンピック大会をフランスのパリで、2028年夏季大会を米国ロサンゼルスで開催することを正式に発表した(関連情報)。その後、米国オリンピック・パラリンピック委員会(USOPC)は、2028年のロサンゼルス夏季大会(LA28)開催に向けて、「USOPC 2024〜2028年戦略計画」を策定している(関連情報、PDF)。この戦略では、最初に表1のようなミッション、コア原則、コアバリューを掲げている。
1984年ロサンゼルス五輪大会では、民間資金の導入などによる商業的成功が注目されたが、USOPCの2028年大会に向けた戦略計画は、大会における競技力や商業収益だけでなく、インパクト(社会的・環境的な影響)を意識したものになっている。表2は、「USOPC 2024〜2028年戦略計画」で設定された3つのコア領域および与えるインパクトについて整理したものである。
USOPCは、内国歳入法(USC 26)第501条C項の規定により課税を免除される非営利団体(501(c)団体)であり、傘下の米国オリンピック・パラリンピック財団(USOPF)経由の寄付金とパートナー企業からのスポンサーシップ収入を主要財源としている。そして毎年、内国歳入庁(IRS)にアニュアルレポート(Form990)を提出し、財務情報を一般に開示する義務がある。
USOPCは、インパクトレポーティング方式を採用したアニュアルレポートを作成・公表している(関連情報)。USOPCの公式パートナー企業であるイーライリリー(関連情報)、ファナティクス(関連情報)、Google(関連情報)、ナイキ(関連情報、PDF)なども、インパクトレポーティングを意識した情報開示を行っている。
USOPCは、2024年パリオリンピック・パラリンピック大会を受けて、次回大会の基盤強化に向けた戦略的アライアンスの取組を進めている。例えば、2024年4月17日、米国務省傘下の外交保安局(DSS)は、USOPCとの間で、国際的なスポーツイベントにおけるチームUSAの安全とセキュリティの調整に関する両者の既存の関係を再確認する覚書(MOU)を締結したことを発表した(関連情報)。
MOUでは、DSSとUSOPCの間の役割や責任、関係を明確化して、オリンピック、パラリンピック、パンアメリカン、パラパンアメリカン大会およびその他の米国外で開催される国際スポーツイベントで、主催国のセキュリティサービスやイベント運営者と協力しながら、チームUSAのために安全でセキュアな環境を提供するとしている。
また、地域臨床医療との連携面では、2024年9月19日、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の関連病院であるシーダーズ・サイナイがUSOPCと提携し、2028年夏季競技大会の公式医療機関として、アスリートやコーチ、チーム関係者、そして世界中から集まる競技参加者に対して、高品質の医療を提供することを発表した(関連情報)。シーダーズ・サイナイは、米国オリンピック・パラリンピック医療ネットワークの一員として、2028年ロサンゼルス夏季大会に向けて米国内外の競技会でアスリートの治療をサポートしているが、今回発表した提携により、2028年夏季大会のオリンピック・パラリンピック村内および競技会場で医療サービスを提供し、同大会における重要なリソースおよび医療アドバイザーとしての役割を果たす予定である。
シーダーズ・サイナイは、200以上の医療施設を有するカリフォルニア州有数の医療提供者であり、整形外科、心臓病学およびその他の分野における専門知識を結集し、最先端の施設と技術を活用してアスリートの健康をサポートしている。またシーダーズ・サイナイは、プロアメリカンフットボールチームのロサンゼルス・ラムズや女子プロサッカーチームのエンジェル・シティーFCの公式医療機関となっている。
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