ポリエチレンの基礎知識、LDPEやHDPEとは?プラスチックの基礎知識(1)(1/2 ページ)

産業技術総合研究所 官能基変換チーム 主任研究員の田中慎二氏がプラスチックの基礎知識について解説する本連載。今回は最も広く使われているプラスチックの一つであるポリエチレンの性質や構造などを紹介します。

» 2024年09月19日 08時30分 公開

 ポリエチレンは、最も広く使われているプラスチックの1つで、日本国内で年間200万トン(t)以上の量が生産されています。筆者たちの身の回りでは、レジ袋などのビニール袋やパッケージフィルム、液体の容器などさまざまな場面でポリエチレンが利用されており、身近なプラスチックでもあります。そこで今回は、そのポリエチレンの特徴について概説します。

ポリエチレンの用途のイメージ ポリエチレンの用途のイメージ[クリックで拡大]

ポリエチレンの性質

 ポリエチレンは比較的柔らかく、加工しやすいプラスチックです。水をはじき、空気を通しにくい特徴も有しているため、食品保存などに適しています。水だけでなく、油や薬剤にも強いためこれらの容器にも使用されています。

 また、電気を通しにくい性質もあります。加えて、安価であることから、使い捨て容器に使われる傾向が高いです。一方で、熱に弱く、100℃以下で変形するためお湯を入れたり調理に使ったりはできない他、強度がやや低いという性質があります。

ポリエチレンの構造

 ポリエチレンは、「エチレン基」と呼ばれる2つの炭素と4つの水素から成る骨格が、繰り返し連結した化学構造を基本としています。これは高分子の中で最も単純な構造といえます。原料は不飽和炭化水素のオレフィン類であるため、ポリオレフィンに分類されます。

ポリエチレンの構造のイメージ ポリエチレンの構造のイメージ[クリックで拡大]

 ポリエチレンは大別すると、低密度ポリエチレン(LDPE)と高密度ポリエチレン(HDPE)があります。LDPEは、密度が低い(0.93g/mL未満)ポリエチレンですが、低密度なのは基本構造から側鎖にもポリエチレンが伸びた分岐構造をしているからです。このような不規則な構造を持つため、綿毛のように隙間が多くなり、柔らかくなります。また、結晶を作りにくくなるため透明性の高い性質を示すようになります。食品パッケージやフィルム類にはこのLDPEが使われます。

 HDPEは、密度が高いポリエチレンで、分岐していない直線構造を有します。直線構造は、高分子が規則正しく整列しやすくなるため結晶性が高くなります。結晶性が高いと、分子が動けなくなるため、変形しにくくなりLDPEと比較すると硬くて頑丈な性質を示すようになります。結晶性がとても高いと透明性は低下します。こういった特徴のためHDPEは、バケツやタンクなどの容器やその他のプラスチック製品に使われています。さらに、分子量が極端に大きいものは超高分子ポリエチレンと呼称され、スーパーエンプラに分類される強度の高い材料となります。

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