AI insideは同社の事業戦略に関する説明会を開催した。「DX Suite」や「Heylix」など同社のプロダクトについての戦略発表を抜粋して紹介する。
AI insideは2024年5月31日、同社の事業戦略に関する説明会を開催した。本稿ではAI(人工知能)によるOCR(光学式文字認識)サービス「DX Suite」や、AIエージェント「Heylix」など同社のプロダクトについての戦略発表を抜粋して紹介する。
AI insideはHeylixやDX Suiteに加えて、AI向けエッジコンピュータ「AI inside Cube」などを展開するスタートアップだ。DX SuiteやAI inside Cubeによって企業におけるデータ活用の前段階として重要な、データ入力の効率化や自動化を促進するとともに、Heylixによる業務自動化とデータ活用の支援を目指す。
以下ではHeylixを取り上げて紹介する。Heylixは画像やテキストなどさまざまな形式に対応したマルチモーダルな生成AIアシスタントサービスで、多様なタスクを自然言語で設定して実行することができる。2023年6月に発表した、独自開発の日本語対応の大規模言語モデル(LLM)「PolySphere-1」をベースに開発されている。
なお、同LLMは発表当時140億パラメータと説明されていたが、現在の独自LLMの規模は473億パラメータにまで拡大している。AI inside 代表取締役社長CEOの渡久地択氏は「複数のAIモデルが協調して動くといった、新しいアーキテクチャも構築できるようになった。非常に専門的な内容でも、文脈を踏まえながらしっかりと返答ができるようになってきている」と説明した。
同年8月にHeylixのβ版を発表し、その後、七十七銀行や損害保険ジャパンなどで業務効率化を目指した導入プロジェクトなどが進んでいる。
発表会では、Heylixを活用した製造業界向けの図面管理デモを披露した。デモ画面では、空気清浄機に使われている図面を格納したデータストレージが表示されており、メッセージボックスに「部品Bを使っている製品をリストアップして」と指示を出すと、該当する図面を瞬時にリストアップして提示する様子が見受けられた。
少し条件を付けたリクエストにも対応可能だ。例えば「生産時期が2023年4月から8月までの間で図面の変更履歴が5回以上あるものをピックアップして」とメッセージを送ると、指示通りの作業を実行する。渡久地氏は「以前の設計図を基に、新しい設計図の価格見積もりを出しやすくなることが考えられる。また、特定の部品を使った製品にリコールがかかった場合にも、対話型のインタフェースですぐに図面を検索できる」と説明した。
図面検索/管理のように、業務領域によっては効率化や自動化に特化したサービスがすでに市場にあるケースも想定される。こうしたサービスに対しては、適用領域の前後工程まで含めて柔軟にワークフロー自動化を果たせる点や、対話型のインタフェースを提供できる点などで差別化できると見込む。HeylixとAPI連携することで、既存サービスの機能拡張や改善などを促すなどの使い方も想定する。
AI inside 執行役員 CPOの北川裕康氏は「やはり製造業では、工場や倉庫などで紙を大量に使う機会がまだ多い。特に図面のデジタル化ニーズは強く、Q&Aシステムや見積もりシステムなどで使いたいという声がある」と語る。図面をDX SuiteによってOCR化した上で、Heylixで活用するというストーリーを描き、両サービスの連携を進めていきたいと説明した。
この他、保険業界向けの本人確認書類の自動マスキング処理やチャットbotサービスのデモも披露した。
AI insideでは2024年6月以降に、サードパーティーアプリケーション向けにHeylixのSDK(ソフトウェア開発キット)やAPIなどを公開する予定だ。これによって、サードパーティーアプリケーションを通じて投げかけられたリクエストに対して、Heylix側が画像認識やOCRなどのAIモデルを組み合わせて、返答する仕組みの構築を目指す。
ここでのサードパーティーアプリケーションには市販のSaaS型ソリューションだけでなく、社内で導入済みの基幹システムなども含まれている。将来的に、これらとHeylixを連携させるだけで、「サードパーティーアプリケーションの高度なAI化」(渡久地氏)を達成できる仕組みができないか検討しているようだ。
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