EUの研究開発プログラム「ホライズン・ヨーロッパ」では、デンマークだけでなく、欧州各国の研究/教育機関やスタートアップ企業、民間企業、医療機関などが、プライバシー強化技術の社会実装に向けたさまざまなプロジェクトに取り組んでいる。以下では、その中から、主要な4プロジェクトを紹介する。
ENCRYPTは、主要なアクターのニーズや選択を考慮して設計され、i)ラボにおけるバリデーションテスト、ii)医療セクター(がん治療チームの情報共有)、サイバーセキュリティセクター(サイバー脅威インテリジェンス情報共有)、金融セクター(Fintechのデータ分析)においてコンソーシアムパートナーが提供するユースケース(越境データ処理を含む)、iii)外部ユースケース(連携型医療データセット上でのプライバシー保護計算を含む)の3つのフェーズでバリデーションを行うとしている。なお、ENCRYPTシステムは、Microsoft Azureのクラウド環境上にホスティングされる。
TRUMPETプロジェクトでは、欧州のがん専門病院の特別なユースケース(1:非小細胞肺がん、2:定位放射線治療、3:頭頸部がん)を通じて、汎用的なTRUMPETプラットフォームのテストやデモンストレーション、バリデーションを行い、患者のプライバシーを保証しながら、研究者や政策立案者が、過去に不可能だった越境型、組織横断型のがんデータから、AI駆動型の洞察抽出を可能にする。プラットフォームに準じた強力なプライバシー保護は、独立したプライバシー漏えいや再識別化のテストに外部専門家が関与することによって証明されるとしている。
HARPOCRATESでは、最初にデータベースをセキュア化/民営化するために、暗号化を差分プライバシー原則と効果的に結合させるような方法を提示する。次に、連携型データスペースに渡る暗号文上で、極めて正確な予測を実行することにより、暗号化データを分類できるようなプライバシー保護機械学習モデルを構築する。最後に、このようなソリューションがユーザーのニーズに対応する方法を示すために、睡眠治療向けデータ分析および地方政府機関向け脅威インテリジェンスに関連した、2つのリアルワールド越境データ共有シナリオを実装するとしている。なお、HARPOCRATESのコーディネーターを務めるフィンランドのタンペレ大学は、耐量子計算機暗号(PQC:Post-Quantum Cryptography)領域のホライズン・ヨーロッパのプロジェクト「QUBIP」(関連情報)でも重要な役割を担っている。
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