AI家具移動ロボットが日常生活“カイゼン”、日々の数歩の削減で何が変わるか羽田卓生のロボットDX最前線(7)(2/3 ページ)

» 2024年02月13日 08時00分 公開

移動するロボットがなぜ日常生活をカイゼンするのか

 では、なぜカチャカを使うと家が片付くのか。礒部氏は「カチャカは片付けを楽にする仕組みを作っている。人にはやるべきことがいっぱいあり、普通は片付けなんて面倒でしたくない。しかし、片付けを先延ばしすると少しづつ家が散らかっていく。片付けで重要なのは、モノの住所、定位置を決めること。これは製造現場と同じで、モノの定位置を決めることがカイゼンの基本となる」と話す。

 決められた場所に決められたモノを収納することで、モノを探す時間を削減し、作業効率を高めるのは工場のカイゼンにおける基本の1つだ。カチャカを使うことで、これを家庭で実践できるようになるというのだ。

カチャカによってモノの定位置が決まる[クリックで拡大]

 部屋を片付けずにいると、モノが定位置に戻らず迷子になって、探すのに時間がかかり、ストレスも生じてしまう。カチャカは指示を受けると家具を人の前まで持ってきて、用が済むと元の位置に戻してくれる。日常でよく使うモノをまとめてカチャカに置いておけば、カチャカが定位置となってモノの整理整頓が済んでしまうのだ。

 それによって、自分で家具の定位置の場所に行くより、歩数が少なくて済む。この、ほんの数歩だが日々繰り返される手間の削減が、長い目で見ると大きな効果を発揮する。確かに言葉などで非常に伝えるのが難しいコンセプトであり、実際に使ってみないとその価値は分からないかもしれない。

 礒部氏によると「マルチタスクが得意な人がカチャカを使いこなすケースが多い」という。例えると、カチャカを使って食事の配膳をしながら、自分が下膳もするようなケースだ。

専用家具を運ぶカチャカ[クリックで再生]

AIのために要素技術から練りこまれたロボット

 カチャカのデザインは非常にシンプルだが、中身は非常に高度に設計されている。特にAIのパフォーマンスをフルに発揮するために作られており、ソフトウェアのバージョンアップとともに劇的に性能が進化する可能性を持ったハードに思える。

 従来型の携帯電話端末(フィーチャーフォン、ガラケー)からスマートフォン(スマホ)に変わった時代を思い出してほしい。ガラケーは購入した瞬間が性能のピークだが、スマホはOSがどんどんバージョンアップされ、アプリも増えていく。ハードウェアは変わらずとも、ソフトウェアの更新で中身は進化する。

 カチャカのコアとなる独自基板のCPUは、音声認識や障害物回避、衝突予測を可能にする5つの最先端のDeep Learningモデルを搭載している。限られた計算資源の中で、5つものモデルを動かすことは非常に困難だが、これらはPFNが開発したAIプロセッサ「MN-Core」を用いて最適化されているという。普通のロボットを専業とする組織ではまねができない芸当だ。

 センサー類も多数搭載されており、高精度の自己位置推定や床面の状況確認、さらに生活音の中での高精度な音声認識も行える。これらにも、PFNの高度なAI技術が使われており、完成度の高い製品として仕上がっている。カチャカは家具がロボットになったのではなく、AIを家具という形で実体化した製品なのだ。

カチャカの内部カメラからの映像のキャプチャー。多数のセンサーを駆使して自己位置推定や床の状況確認を行っている[クリックで拡大]出所:Preferred Robotics

カチャカに搭載されているセンサー類

RGBカメラ 2個

LiDAR(Light Detection And Ranging) 1個

ToF(Time of Flight)センサー  1個

段差センサー  2個

家具認識センサー 1個

マイク 4個


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