パナソニック コネクトがカメラ画像の利活用における企業のプライバシーガバナンスについて説明。同社はカメラ画像を含めた個人情報/パーソナルデータの利活用案件に対応するための専門組織を立ち上げ、データ利活用とプライバシーの両立に向けた取り組みを進めている。
パナソニック コネクトは2023年12月5日、東京都内とオンラインで会見を開き、カメラ画像の利活用における企業のプライバシーガバナンスについて説明した。同社が技術開発に注力している顔認識をはじめAI(人工知能)カメラの普及が進む中で、カメラ画像を含めた個人情報/パーソナルデータの利活用案件に対応するための専門組織を2021年1月に立ち上げるなどして、データ利活用とプライバシーの両立に向けた取り組みを進めているという。
これまでもセキュリティ用途を中心に監視カメラが普及してきたが、AIの技術開発が加速することにより顔認識をはじめとするAIアルゴリズムを活用したAIカメラの市場拡大が急速に進んでいる。プライバシーとの関係性が深い顔認識カメラについては、大まかに分けて「利用者認証」「防犯」「属性推定」の3つに分けられる。
利用者認証は、スマートフォンのロック解除や決済、空港でのパスポート確認などで用いられる、登録された本人情報と比較する1対1認証であり、基本的に顔認証の許諾が取れている(オプトイン)。防犯は、万引き防止や犯人捜査などに用いられるもので、容疑者の顔画像を基に検出する1対n認証だ。顔認証の同意も、利用に反対しない(オプトアウト)形で同意が取れている。そして属性推定は、小売店におけるAI接客やリピート分析など、不特定多数を対象に自動的に年齢や性別などの属性を推定する。この場合、同意は不要とされている。
明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 教授で個人情報保護法委員会の有識者検討会の構成員や経済産業省・総務省傘下のIoT推進コンソーシアム データ流通促進WG カメラ画像利活用サブWGの座長を務める菊池浩明氏は「個人情報保護法において個人情報≠個人データはない。例えば、リピート分析や万引き防止、防犯対策において個人を特定するための顔認識に用いる顔特徴量は、個人情報取扱事業者に対して安全管理措置管理義務が発生する個人データとなる。一方、AI接客に用いる顔画像は個人情報であり取得の通知義務がかかるが、その顔画像から推定した年齢や性別はパーソナルデータであり、個人情報の枠からも外れる」と説明する。
ただし、事業者が顔認識カメラを利活用する際には、個人情報保護法などの関係法令を順守することだけでは十分とはいえない。「法規制の対象にはならないもののプライバシー保護の観点で考慮すべき範囲はより広くなる。個人情報保護法委員会の有識者検討会で作成した報告書は、防犯目的の事業者を対象に議論を行ったが、カメラ画像利活用サブWGで作成したガイドブックは防犯目的以外の商用利用事業者まで対象を広げた。今回のテーマとなる企業におけるカメラ画像の利活用は、カメラ画像利活用ガイドブックと同様に考慮すべき範囲を広くとるべきだ」(菊池氏)という。
この他、顔認識カメラについて、監視カメラなどの「従来型カメラ」、AI接客のように顔画像は取得するものの性別や年齢を推定した後は即廃棄するような「属性識別カメラ」、万引き防止や防犯対策に用いる「犯罪者検出カメラ」に3分類した上で「これらが一般消費者に分かりやすく示せるような取り組みも必要になるのではないか」(同氏)と提案した。将来に向けては、有識者検討会の報告書で指摘している、PIA(プライバシー影響評価)の実施や、新規性のある事案における第三者委員会の設置、大規模なプロジェクトにおける透明性レポートの作成/公表などについて、事業者が自主的に取り組むことこそが、一般消費者からの理解を得られる道筋になるだろうとしている。
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