日本のモノづくりの現状を示す「2023年版ものづくり白書」が2023年6月に公開された。本連載では3回にわたって「2023年版ものづくり白書」の内容を紹介していく。
2023年6月に公開された「令和4年度ものづくり基盤技術の振興施策」(以下、2023年版ものづくり白書)を読み解く本連載。第1回では業績動向や就業者数など、国内製造業の現状を確認した。続く第2回ではGX(グリーントランスフォーメーション)の流れが世界的に加速するなかで、日本製造業の脱炭素への取り組みについて掘り下げた。
第3回となる本稿では、GXの進展にも関わるDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みやデジタル人材の育成について見ていきたい。
ここ数年のものづくり白書では、激しい環境の変化に製造企業が対応するために必要な能力として、自己を変革していく能力を意味する「企業変革力(ダイナミック・ケイパビリティ)」を挙げており、デジタル技術はこのダイナミック・ケイパビリティを強化、促進、実現するために不可欠なツールとされている(図1)。なお、ものづくり白書における「デジタル技術」とは、ICT(情報通信技術)やIoT(モノのインターネット化)、画像や音声認識領域でのAI(人工知能)の周辺技術、RPA(Robotic Process Automation)など、製造現場で使われる新技術を指す。
加えて、2021年に経済産業省が公表した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」においても、DX(デジタルトランスフォーメーション)と脱炭素の実現は「車の両輪」であるとして、DXによるエネルギー需要の効率化(グリーンbyデジタル)を掲げている(図2)。
このようにDXの重要性はますます高まりつつあるが、スイスの国際経営開発研究所(IMD)が発表している63カ国・地域を対象とした「世界デジタル競争力ランキング」における、日本の2022年の総合順位は過去最低の29位だった。トップ3は順にデンマーク、米国、スウェーデンとなっている。項目別の順位では、DXを行う上で特に重要な要素の1つである「ビッグデータの活用と分析(Use of big data and analytics)」や、「企業の敏捷性(Agility of companies)」が最下位、「デジタル/科学技術的なスキル(Digital/Technological skills)」が下から2番目だった。
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