これまで製造現場のコンプライアンス違反といえば、品質にかかわる不正や不祥事がメインでした。しかし近年、ESG経営やSDGsの広まりから、品質以外の分野でも高度なコンプライアンス要求が生じています。本連載ではコンプライアンスの高度化/複雑化を踏まえ、製造現場が順守すべきコンプライアンスの外延を展望します。
顧客要求の多様化、ESG(環境・社会・ガバナンス)やSDGs(持続可能な開発目標)などサステナビリティ経営に対する社会的要請、法規制対応の複雑化、地政学的な変化など、製造業のモノづくりに求められる要件はますます複雑化しています。企業は、いつの時代でも競合の優位に立ち、顧客に選ばれるためには、経営の意思決定とオペレーションのスピードが求められます。「新製品上市期間短縮」「短納期」「サプライチェーン連携の複雑化」「利益創出」など、複雑かつスピードが求められる環境では常に高次のプレッシャーにさらされながら、新製品の開発を行う必要があります。
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利用用途を踏まえておらず必要性に乏しい過剰な要求品質(コスト/納期を踏まえない)は、製造工程や品質検査の作業手順の増加につながります。不良発生時に、時間的余力のなさから品質不正に手を染めてしまったというケースもあります。行き過ぎた製品性能(燃費や静穏性など)重視の製品差別化を図る企業もありますが、これも過剰な要求品質の一例といえるかもしれません。
また、販売済み製品では価格を維持(もしくは定期値下げ)するためのコストプレッシャーがかかる中、安定供給することも求められます。製造ロットサイズの縮小による非効率化や製造設備の老朽化、材料費の上昇などのコスト上昇圧力がかかる中、これまでの慣例に基づくモノづくりの取り組みが「品質」「コスト」「納期」のバランスを崩しており、品質不正を引き起こす一要因になることも考えられます。品質重視、製品性能重視の製品開発だけではなく、品質とコストのバランスを保ちながら、さまざまな要件を踏まえた上でシーズやニーズの早期検証を行えるように製品開発のリードタイムを短縮することが望ましいでしょう。
リードタイム短縮を実現するためには、(1)デジタル技術を活用してデジタル上での情報共有や意思決定によって手戻りを削減し、(2)情報連携を前提とした業務を推進することで部門間のサイロ化を解消し、関係者間での認識齟齬(そご)による意思決定の遅れや手戻りを削減するなどの手法が考えられます。組織的な情報の見える化を優先することでさまざまな立場の視点、意見が入り、品質の向上につながるでしょう。
顧客志向の変化や各国の法規制の強化を受けて製品仕様は複雑化し、さまざまなバリエーションが求められています。加えて、サステナビリティを実現するためのサーキュラートランジションに向けて、再利用可能な製品設計を志向する向きも強くなっています。製品設計は、生産技術、製造、調達部門、サプライヤーと密に連携し、手戻りを最小化して進めていくことが重要です。手戻りの主たる原因は情報のサイロ化、連携不備によって引き起こされます。
例えば、設計部門に対して他部門から製品仕様に関するフィードバックがなされないことにより、以下のような問題が発生する可能性があります。
これらを解決するためには、「設計・コミュニケーションプラットフォーム」を活用し、コンカレント(同時進行)な設計開発を進めていくことが重要です。
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