原材料高騰しても営業利益は過去最高に、生産拠点の国内回帰も進む製造業ものづくり白書2023を読み解く(1)(5/6 ページ)

» 2023年07月19日 08時00分 公開
[長島清香MONOist]

製造業の賃金は全産業の賃金より低水準に

 有効求人倍率(季節調整値)は2010年以降上昇を続け、2018年9月に1.64倍を記録したが、同年後半から激化した米中貿易摩擦、2020年の新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う製造業、宿泊業・飲食サービス業などの業況悪化も影響し、2019年から2020年にかけて低下し、同年9月には1.04倍となった。

 しかし、同月以降は社会経済活動の活発化に伴い再び上昇基調に転じ、直近の2023年2月は1.34倍と、求人が求職を上回って推移する状況となっている(図27)。

図27:有効求人倍率(季節調整値)の推移[クリックして拡大] 出所:2023年版ものづくり白書

 主要産業別の新規求人数をみると、ほぼ全ての産業で新規求人数は増加傾向にあり、特に製造業においては2020年5月のマイナス42.8%を底に、同年下半期からマイナス幅が縮小して増加傾向に転じた。なお、直近の2023年2月では、物価上昇などの影響もあり、対前年同月比で0.2%となっている(図28)。

図28:主要産業別の新規求人数の対前年同月比の推移[クリックして拡大] 出所:2023年版ものづくり白書

 日本の全産業の就業者数は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響もあり、2019年から2020年にかけて減少したものの、直近では2021年が6713万人、2022年が6723万人と増加している。製造業の就業者数については2019年から2021年にかけて減少したが、直近では2021年が1045万人、2022年が1044万人と横ばいで推移している。全産業に占める製造業の就業者の割合は低下傾向で推移しており、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けた2020年以降においても、その傾向に変化はみられない(図29)。

図29:就業者数の推移[クリックして拡大] 出所:2023年版ものづくり白書

 全産業および製造業における一般労働者の賃金(所定内給与額)の推移をみると、2014年以降はそれぞれ上昇傾向で推移している。しかし、直近の2022年の全産業における賃金は約31万2千円であるのに対し、製造業の賃金は約30万2千円となっている(図30)。これまで製造業の賃金は全産業の賃金を一貫して下回っており、さらに両者の賃金の差額は2006年時点で約2千円であったが、2022年においては約1万円になっている。

図30:賃金(所定内給与額)の推移[クリックして拡大] 出所:2023年版ものづくり白書

 製造業における男女間の賃金格差指数をみると、男性の賃金指数を100とした場合の女性の賃金指数は2005年から上昇基調にあるものの、直近の2022年でも70.3と、依然として男女間に賃金格差がみられる。また、全産業と比べると、製造業における女性の賃金指数が一貫して低くなっており、直近の2022年においても全産業を下回っている(図31)。

図31:男女間賃金格差指数[クリックして拡大] 出所:2023年版ものづくり白書

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