ツールを使用すれば目的が達成できると思ったが、調べていくとできないことが分かった
これは、ケース4の逆パターンで、ツールを使ったけど目的が達成できなかったケースです。当初、ツールを使用すれば目的が達成できると思ったのですが、進めると目的達成が困難でした。ツールがうまく使用できれば、作業がスムーズにいくはずだったのですが、無駄な時間を使いました。
上記のように、ツールを使用しても目的が達成できないことがあります。リスク管理の観点からうまく使用できないことも考える必要があるでしょう。
慣れないツールを使用して開発を進めたため、生産性が異常に落ちた
ツールの習熟度が低いツールを使用して開発を進めることになりました。このツールを使用すると、工数削減で大きな効果があるようですが、チームメンバーはツールについて詳しくありません。結果、従来手法では10分で終わる作業が、ツールを使用すると、数時間、場合によっては数日かかることもありました。
加えて、このプロジェクトでは、このツールを使用することが前提となっており、従来の方法を使えません。そのため、筆者は毎日、「今までのやり方なら一瞬なのに……」と何回もため息をつき、業務を進めました。
使用していた無償ツールがある日突然有償ツールに変わり、慌てた
愛用していた無償ツールがあったのですが、ある日、もうすぐ有償になることが分かりました。チーム内は慌てます。「あのツールが有償になって使えなくなったらどうすんの?」とのやりとりがありました。ツールを購入すると会社の資産となるため、社内の審査を通さねばならず、簡単には購入できません。結果として購入できましたが、ツールが無くなることへの恐怖感を感じました。
世の中には無償にもかかわらず、強力なツールが数多くあります。筆者が無償ながら、強力なツールと痛感しているのが、Diffツールやバージョン管理ツールです。これらは、ソフトウェア開発に必須のツールで、無償であることのありがたさを日々感じています。
無償ツールには、いつ有償になるか分からない危険性があります。気付かずに使用すると、最悪の場合、お金を払ってないユーザーと認定され、高額な損害賠償を受ける可能性もあります。ここは非常に要注意です。
今回は、ツールの導入/運用時に生じる可能性のある問題点をケーススタディー形式でまとめました。他にもいろいろあるでしょうが、ツール導入時の参考になれば幸いです。次回もその他のケーススタディーを紹介する予定です。
前々シリーズ「ソフトウェア技術者のためのバグ百科事典」を大幅に加筆、修正した山浦恒央先生の書籍「ソフトウェア技術者のためのバグ検出テキスト」が日科技連出版から好評発売中です。連載でも取り上げた、「要求仕様書のバグ」「実装抜けのバグ」「テスト業務のバグ」など、バグを36種類に分類して解説しています。囲碁や将棋であれば、「相掛かり」「矢倉」「四間飛車」「藤井システム」のような戦法を網羅した内容になっています。
前著「ソフトウェア技術者のためのバグ検出ドリル」(2019年11月刊行)も好評発売中です。実際にバグを含む要求仕様書、設計書、コーディング、デバッグ、保守を具体的に取り上げ、練習問題として31問を出題しました。同書は、囲碁や将棋における「次の一手」的な問題であり、ピンポイントの場面を取り上げ、実践力を鍛えることを目的としています。
両書とも興味のある方は、Amazon.comや書店でチェックしてください!
東海大学 大学院 組込み技術研究科 非常勤講師(工学博士)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.