OKIは、2022年度の決算概要を発表するとともに、2025年度までを対象とした中期経営計画を発表。コロナ禍以降の業績が縮小均衡となる中、新たな成長の芽を形とし、次期中期計画での本格成長に向けた土台作りとする方向性を示した。
OKIは2023年5月10日、2022年度(2023年3月期)の決算概要を発表するとともに、2025年度(2026年3月期)までを対象とした中期経営計画を発表。コロナ禍以降の業績が縮小均衡となる中、新たな成長の芽を形とし、次期中期計画での本格成長に向けた土台作りとする方向性を示した。
OKIの2022年度連結業績は、売上高が前年度比4.8%増の3690億9600万円、営業利益が同59.0%減の24億300万円、経常損益は同80億1900万円悪化し3億2800万円の赤字、当期純損益が同48億6500万円悪化し28億円の赤字となった。
セグメント別では、ソリューションシステム事業は、前年度からの期ずれ案件の刈り取りなどにより増収となったものの、ソフト開発案件のコスト増や為替の影響などにより、減益となった。また、注力するDX(デジタルトランスフォーメーション)関連領域の売上高は404億円となり、前年度比25%増となったものの目標には未達で、収益を支える形にはならなかった。コンポーネント&プラットフォーム事業は、モノづくりプラットフォーム領域でFAや半導体装置向けの売り上げの好調が続くが、コンポーネント領域で自動機事業の半導体部材不足などがあり、減収となった。
2022年度は中期経営計画の最終年度だったが、売上高4650億円、営業利益200億円、当期純利益120億円、自己資本比率30%、ROE(自己資本利益率)10%とした目標数値は大幅に未達となった。OKI 代表取締役社長執行役員 兼 CEOの森孝廣氏は厳しい結果について「コロナ禍やサプライチェーン問題などがあり、2022年度を危機対応年と位置付けて立てた目標も未達となり厳しい結果となった。環境は確かに厳しかったが、本質的な問題は対応力不足にある。細分化され多層化された組織構造や縦割りで保守的な企業風土により対策へのスピードやダイナミックさに欠けていた。また国内偏重の事業構造などもこうした対応力不足の遠因となった」と語っている。
実際に過去の売上高と営業利益の推移を見ると「2017年度に強い事業へと集中する方向性を示し、それにより一時的に成長へと転換したものの、2020年からは縮小均衡状態に入り、うまく成長への転換が取れない状況に陥っている」(森氏)。
そこで新たな中期計画では、キーメッセージである「社会の大丈夫を作っていく。」は変わらないものの「成長へ舵を切り、縮小均衡から脱却する」を掲げ、「2019年度水準への業績回復と棄損(きそん)した財務基盤の回復」と「2026年度以降の将来事業の創出」の2つのテーマに取り組む。具体的には「事業ポートフォリオの見直し」「営業/技術/生産の強化」「将来事業の創出」「財務基盤の改善と効果的な投資」「サステナビリティ経営の実践」の5つに取り組み、2025年度に売上高4500億円、営業利益180億円、自己資本比率30%を目指す。
事業ポートフォリオの創出については、従来は2事業本部制だったのに対し、役割を明確化した4セグメント5事業部制へと切り替える。「事業規模を1000億円程度にそろえ、事業のバリューチェーンを最適化する。また各事業でROIC(投下資本利益率)経営を徹底していく。従来は成長領域や安定領域が混在していたが、再編成することでそれぞれの事業の位置付けを明確化する」と森氏は狙いを述べている。
営業/技術/生産の強化については、事業部門ごとではなく全社基盤としての強化を進めていく。営業部門では、エリア担当制から専門市場担当制へと再編する他、グローバル事業推進本部を立ち上げ海外売り上げの強化に取り組む。技術開発部門では、先行技術開発に特化し注力分野に3年間で350億円を投資する。また、システムセンターにソフトウェアのシステムエンジニアを集結し品質ロスコストの削減を行う。生産部門では全社生産工場と調達を統合し「バーチャルOneファクトリー構想」のもと、生産効率とQCDの最適化を目指す。
将来事業の創出に向けては「海洋」「社会インフラ」「製造」領域をターゲットとし、OKIの強みやノウハウを生かした社会課題解決に取り組む。社内革新の成果を社外に提供し、それを社内に戻す価値創造のサイクルを作り、新たな事業創出につなげる方針だ。
社内改革の取り組みとしては、具体的な取り組みとして「全員参加型イノベーション」を推進。社内のビジネスアイデア実践コンテストでは年々参加者が増え、既にビジネス化が進みつつあるものも生まれ始めている。これを中期計画内で形にし、次期中期計画での本格成長につなげていく方針だ。また、強みとするAIエッジ領域を、現状でのハードウェア提供だけではなく、エッジプラットフォームとして提供することを検討する。エッジ領域でのデータサイクル構築し提供価値拡大を目指す。
その他、事業部ごとに設置していた海外拠点を全社前線基地とし、あらゆる製品の販売につなげる他、R&D機能を持たせ、先進技術や現地ニーズの取り込みを図る。R&Dを目的とした海外拠点を新設することも検討する。森氏は「中期計画を通じて、会社を前向きで未来志向の企業へと変革していきたい。そして、日本の『社会の大丈夫を作る』から、グローバルで『社会の大丈夫を作る』企業へと飛躍させたい」と抱負を述べている。
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