ルネサス エレクトロニクスが同社のエッジAIの事業状況や今後の展開などを説明。エッジやエンドポイントといった現場側へのAIの実装では「DRP-AI」をはじめとする同社の技術やパートナーとのエコシステムが生かせる点を強く打ち出した。
ルネサス エレクトロニクスは2023年4月20日、東京都内で開催した同社のAI(人工知能)アクセラレータ「DRP-AI」のエンジニア向けイベント「Renesas AI Tech Day」に併せて報道陣向けに同社のエッジAIの事業状況や今後の展開などを説明した。最も強く打ち出したのは、AIアルゴリズムの学習環境においてNVIDIAがほぼデファクトスタンダートとなる中で、エッジやエンドポイントといった現場側へのAIの実装についてはDRP-AIをはじめとするルネサスの技術やパートナーとのエコシステムが生かせる点だ。
ルネサス エレクトロニクス グローバルセールス&マーケティング本部 営業統括部 ヴァイス・プレジデントの迫間幸介氏は「ルネサスは日立製作所、三菱電機、NECを起源とする技術基盤に加えて、2017年以降さまざまな企業を買収で傘下に収めることで新技術を獲得し、製品群を拡充している。これによってセンサーからアクチュエータに至るまで、シグナルチェーン全体に渡る豊富な半導体ソリューションの提供が可能になっており、組み込みシステムの開発に広く貢献できる。そのさらなる進化においてAIは重要な役割を担っており、DRP-AIをはじめとするルネサスの独自技術に加えて、認定パートナーネットワークとの連携によりAIソリューションの提案に注力していく。Renesas AI Tech Dayは、ルネサスとして初となるAIイベントだが、顧客企業から約200人の参加があり、大きな手応えを感じている」と語る。
ルネサスのAI事業の主戦場となるのは、さまざまな形で活用が広がっているクラウドではなく、組み込みシステムが用いられているエッジやエンドポイントになる。ルネサス エレクトロニクス IoT・インフラ事業本部 エンタープライズ・インフラ・ソリューション事業部 シニアダイレクターの野村守氏は「エッジ/エンドポイントAIでは推論処理にリアルタイム性だけでなく、個別に用件が異なる組み込みシステムへの最適化も求められる」と指摘する。
ただし、組み込みシステムにおけるAI導入は3つの課題がある。1つ目は、ばく大な演算量となるAI処理によって発生する高い消費電力と発熱への対応だ。2つ目は、クラウドでのAI活用とは異なり、「AIスキル」「事業化」「量産化」という3つの壁がまだ大きく立ちはだかっていることだ。そして3つ目は、組み込みシステムがさまざまな用途で使われているが故に、個別のAI実装が必要になってしまうことである。
ルネサスが、1つ目の課題である高い消費電力と発熱への対応の切り札として開発を推し進めているのがDRP-AIである。DRP-AIは、ルネサス独自の動的再構成ハードウェアである「DRP(Dynamically Reconfigurable Processor)」と、高いAI性能を実現する積和演算ユニット(AI-MAC)から構成されるAIアクセラレータだ。重みデータの再利用によるメモリアクセス量の低減、ゼロが多いAI推論の特徴を生かした演算器停止制御、データ転送と演算効率良く行うスケジューリングといった機能があり、ルネサスが提供する専用AIツールを使えば既存のAIモデルも自動で最適化できるため実装も容易だ。DRP-AIを搭載する製品は既に量産中で、メインストリーム向けの「RZ/V2M」、エントリーモデルの「RZV2L」などがある。
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