表の右から3番目の2000年以前の列を見てください。当時はBOMに対する要求は本当に基本的なもので、構成管理や履歴管理、生産管理に必要なマスター管理が主な機能、要求事項でした。
2000年以前では、設計がBOMを定義して、それに生産情報を付加して製造するという製造業の基本機能を表現していますね。
その通りです。その頃はまだ、BOMが1つしかない企業も多かったのです。
しかし、2000年以降では製品バリエーションが多様化し、開発リードタイムの短縮やコスト削減が要求されるようになります。これに伴い、BOMに対する要求事項が増えたのです。
それで2000年以降は、設計BOMや生産BOMなどの目的別BOMが必要になってきたというわけですね。
表の右から2番目の2000年以降の列がそれを表現しているのですが、コンカレントエンジニアリングやモジュラー設計、原価企画を設計BOMで対応する動きになっています。生産BOMでは、海外含めた複数拠点生産対応のための拠点別生産BOMという考え方が出てきたのもこの時期です。
表を見ると、2010年以降には仕様決定や見積もり、保守、サービスにもBOMの利用範囲が拡大していった、ということになるのですか?
その通りです。見積業務はビジネスのグローバル化とも関係するのですが、海外の営業拠点でも国内同様の見積もりを行うために、仕様の標準化やコンフィグレータを用いた見積もりプロセスを実施する企業が増加しています。
また、保守BOMやサービスBOMと呼ばれるBOMを導入する企業も増えています。これは製品の販売だけではなく、その後の保守、サービスの売上拡大や、顧客との関係性を強化して、次の新製品販売につなげていく考え方とつながっているのでしょう。
なるほどぉ! BOMに対する要求が製造業の環境変化に合わせて高度化していることが理解できました。デジタル技術を用いた経営改革であるDX(デジタルトランスフォーメーション)とも話がつながってきた気がします。
次は、PLMについてももっと知りたいです。BOMを管理するPLMもそれに合わせて高度化してきたのでしょうか?
鋭いですね! 次回は、PLMの基本と要求される機能の変化についてもお話しましょう。
今回はお料理の例え話もあって、とても分かりやすかったです。次回もよろしくお願いします。
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三河 進
株式会社グローバルものづくり研究所 代表取締役
大阪大学基礎工学部卒業。
大手精密機械製造業において機械系エンジニアとして従事後、外資系コンサルティングファーム、大手SI会社のコンサルティング事業を経て、現職に至る。
専門分野は、製品開発プロセス改革(3D設計、PLM、BOM、モジュラー設計、開発プロジェクトマネジメントなど)、サプライチェーン改革、情報戦略策定、超大型SIのプロジェクトマネジメントの領域にある。また、インターナショナルプロジェクトにも複数従事経験があり、海外拠点のプロセス調査や方針整合などの実績もある。
・「図解DX時代のPLM/BOMプロセス改善入門」,日本能率協会マネジメントセンター(2022)
・「5つの問題解決パターンから学ぶ実践メソッド BOM(部品表)再構築の技術」,日本能率協会マネジメントセンター(2018)
・「製造業の業務改革推進者のためのグローバルPLM―グローバル製造業の課題と変革マネジメント」,日刊工業新聞社(2012)
・「BOM/BOP活用術」,日経xTECH(2016)
・「グローバルPLM〜世界同時開発を可能にする製品開発マネジメント」,ITメディア社MONOist(2010)など多数
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