日本の倉庫事情に“ローカライズ”、中国新興企業のACRが国内展開加速物流のスマート化(2/2 ページ)

» 2022年05月18日 10時00分 公開
[池谷翼MONOist]
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高スループットを実現するワークステーション

 ACRは商品棚でピッキングした後、床面の2次元バーコードに従ってワークステーションであるHAIPORTへと運搬し、アンローダー(荷下ろし部分)に一括で降ろす。その後、ケースはピッカーの手元に送られ、商品を取り出した後の空ケースはローダー(積み込み部分)から回収する。回収したケースは入庫用ワークステーションへ運ばれ、新たな商品を入れて棚に戻す。

HAIPORTの外観[クリックして拡大] 出所:HAI ROBOTICS JAPAN

 HAIPORTのサイズは2310×1420×3575mmで、アンローダー部分は1540kg、ローダー部分は1390kg。ACRに対して同時に6±2個のケースをローディング/アンローディングし、1時間当たりで900箱を処理できる。劉氏は「時間内出荷量が大きい倉庫では特に有用だ。ピッカーのスループットが大きく向上するため、注文数の少ない低頻度品から注文の多い高頻度品まで多くの製品を扱えるようになる」と説明した。

防火シャッターをまたぐ機種も投入

 劉氏はHAI ROBOTICSがACRソリューションを国内展開する上で、配慮しなければならない日本固有の倉庫事情があったと語った。防火シャッターの存在だ。日本は一定の面積ごとに防火区画を形成し、防火シャッターを設置することが義務付けられている。もし、シャッター部分にACRがぶつかるようであれば、防火区画をまたいだ移動が難しくなる。A42やA42Nの機体の高さだと、まさに、こうした問題が生じてしまいかねない。

 そこでHAI ROBTICS JAPANでは今後、「HAIPICK A42T」(以下、A42T)を国内展開する計画だ。A42Tは伸縮する機構を備えており、防火シャッターや天井の梁(はり)をまたいだ移動が可能となる。劉氏は「A42Tは日本固有の事情に合わせて、いわば“ローカライズ”した運用ができる機体だ。オーダーとワークステーションのひも付けに関する面倒を減らし、ピッカーの作業効率を向上させるためには、防火区画があり、かつ、それなりの面積を有する倉庫の場合、A42やA42NよりもA42Tの導入が好ましいはずだ」と語る。

 「防火シャッター以外にも、日本の倉庫は空間内の柱の数が多いといった特有の事情がある。海外の倉庫は天井が高く、柱などの遮蔽(しゃへい)物がなく広い。そういった点ではロボットによる自動化もしやすいのだろう。一方で、地域や国ごとのニーズにアジャイルに対応すれば、ロボットを展開できるのは、当社が持つスタートアップならではの機動力を生かした結果だと考える」(劉氏)

 HAI ROBOTICSのACR製品は、国内においては現時点で600台程度受注する見通しで、「1企業当たり平均20台、多い企業では数百台導入する見通しだ」(劉氏)という。A42Tを中心に導入を検討する企業が少なくないようだ。

入庫作業スペースを想定したエリア(左)でケースを積むA42[クリックして拡大]

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