―― まず、MeganeXの開発経緯からお話を伺っていきたいと思います。最初のプロトタイプは「CES 2020」でパナソニックが参考出展したものですよね。あれがベースモデルだと考えていいんでしょうか。
岩佐琢磨氏(以下、岩佐) そうですね。あれがそのままもうちょっと良くなって、今量産モデルに近づいてるという風にご理解ください。
―― 2020年当時、まだ「メタバース」という言葉はバズってはいませんでした。HMDもVR(仮想現実)なのか3Dなのか、あるいは高解像度大型ディスプレイに変わるものなのか、いろいろな方向性があったと思うんですけど、パナソニックとしてはどういう位置付けで開発していたんでしょう。
岩佐 ストレートに言っちゃうと、「私もあんまりよく知りません」が一番正しい回答で(笑)。まあなんとなく、やってるのは聞いてました、というぐらいですね。
どこの大企業もそうなんですけど、新しいビジネスのことを考えてどんどんトライはするんですが、事業化する前にお取りつぶしになるものの方が実際には多くて。ですから、CES 2020でご覧になったものも、まだ事業化のめどがついてないっていう時期のプロトタイプだったと思います。どちらかというと、パナソニック本体の得意とするB2B領域でのユースケースを思い描いている、ぐらいだったかと。
―― それがどういった経緯で、開発をShiftallが引き継ぐことになったんでしょう。
岩佐 実は完全に引き継いではいなくてですね。引き続き開発にはパナソニックサイドの技術者はかなり大きく関わってます。そこにShiftallの技術者も入れて、私が全体の指揮を執るような形で本格的に立ち上げたのが、2021年4月ごろからという状況ですね。まだ1年たってないぐらいです。
われわれはもともと、バーチャルデータの販売だったり「HaritoraX」というボディートラッキング装置を出したりしていて。そこから、メタバースの中に住んでいる人たち、あるいはこれから長い時間を過ごしていく人たちに対して、良いハードウェアであったり、ソリューションだったりを提供していくっていうビジネスを本格的にやろうじゃないかという風に動かし始めたのが2020年の夏ごろでした。
そして2021年になろうかというタイミングから、よりそこに本格的にリソースとお金を投入し始めて、同年4月のタイミングでこのMeganeXの事業の主体という風に進んできました。徐々に徐々に、パナソニック全社のいろんなところにあったVR関係のものを巻き込みながら、今グループの中でメタバース関係をやるんだったらShiftall、みたいな感じですね。
―― なるほど。2020年の段階で、メタバース空間に長時間滞在するみたいなことを考えている人はそんなにいなかったと思うんですが、その時、サービスとしては何を見ていたんですか。
岩佐 ソーシャルVRプラットフォームの「VRChat」ですね。われわれが特に先見性があったわけではなくて、シンプルに、1年間に1000時間以上の時間を使うヘビーユーザーさんたちが国内だけで何千人とそこにいるという状況を見たんです。
その人たちが大変楽しそうにそこでの時間を過ごしていて、下手すると現実よりも楽しいという可能性があるんじゃないかということを皆さん感じていましたし、当時私も感じました。そこで彼らを追って、一気に中に入っていこうと決めたというのが、表現としては正しいですかね。
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