2021年11月の3分割案の発表時に課題として挙げられていた研究開発体制についても具体案が示された。
現在の東芝の研究開発体制は、基礎研究を担う「研究開発センター」「生産技術センター」「ソフトウェア技術センター」の3つのコーポレートラボに加えて、事業と密接に連携して応用研究を進める「エネルギーシステム技術開発センター」「インフラシステム技術開発センター」「ソフトウェアシステム技術開発センター」「デバイス&ストレージ研究開発センター」の4つのワークスラボから構成されている。3分割案の発表時には、スピンオフによってインフラサービスCo.とデバイスCo.に分かれる場合、基礎研究など両社が共通して利用できる研究開発をどこで進めるのか、それらの研究開発リソースをどのように活用するのかが明確になっていなかった。
今回明らかにした2分割案の研究開発体制では、3つのコーポレートラボは東芝本体とインフラサービスCo.に残す一方で、ワークスラボのうちエネルギーシステム技術開発センター、インフラシステム技術開発センター、ソフトウェアシステム技術開発センターはインフラサービスCo.に、デバイス&ストレージ研究開発センターはデバイスCo.に振り分けることを決めた。
AI(人工知能)、IT、セキュリティ、材料、生産・製造、ソフトウェアなどの基礎研究をはじめとする、3つのコーポレートラボで手掛ける「共通基盤領域」については、東芝本体とインフラサービスCo.、デバイスCo.の間で委託契約を結び、デバイスCo.でも共通基盤領域の成果を利用できるようにする。研究開発リソースの配分としては、現在の東芝研究開発体制を100とすると、共通基盤領域で25、インフラサービスCo.の固有領域が55、デバイスCo.の固有領域が20になるというイメージだ。
なお、東芝本体とインフラサービスCo.内では、コーポレートラボとワークスラボの連携組織となる「インフラサービス共創センター(仮称)」を新設する。同センターは、事業部側で新設する「インフラサービス事業推進センター(仮称)」と連携していくことになる。デバイスCo.は、コーポレートラボのデバイス関連分野とデバイス&ストレージ研究開発センターを集結させた「半導体&ストレージ研究開発センター」を新設する予定だ。
東芝 執行役上席常務CTOの石井秀明氏は「スピンオフに向けて考慮すべきはこれまでの“総合力”をどのように発揮するかだ。インフラサービスCo.、デバイスCo.、それぞれの価値を最大化しつつ、パワーエレクトロニクスに代表されるデバイスシステム連携や、共通基盤技術を一体の共通組織として担保するなどして、“総合力”の維持向上に努めたい」と述べる。
また、小向事業所(川崎市幸区)内に2023年度稼働をめどに建設中の研究開発新棟には、インフラサービスCo.とデバイスCo.の技術者約3000人が勤務する予定である。「両社の技術者による共創、顧客やパートナーとの共創を進め、多様性の集結、人材、技術、社会価値創造の拠点、オープン志向で社会に価値を届ける中心地としていきたい」(石井氏)としている。
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