i Smart Technologies(iSTC)は2021年9月10日、同社の5周年イベント「iSTC Evolution2021」において、同社の現場見える化ツール「iXacs」で得られる現場データをより幅広く活用し製造業経営に生かすため「IoT経営ダッシュボード」と「KaaS(Kaizen as a Service)」という2つのサービスを開始すると発表した。
i Smart Technologies(iSTC)は2021年9月10日、同社の5周年イベント「iSTC Evolution2021」において、同社の現場見える化ツール「iXacs」で得られる現場データをより幅広く活用し製造業経営に生かすため「IoT経営ダッシュボード」と「KaaS(Kaizen as a Service)」という2つのサービスを開始すると発表した。
iSTCは自動車部品を製造する中堅製造業である旭鉄工を母体としている。もともと自社内の工場の改善や自動化を進めるため、IoT(モノのインターネット)を活用した安価でシンプルな見える化システムを自社開発し、これが社内で大きな成果を生み出した。そこで「自社以外にも役立てられるのではないか」と考え、スマートファクトリーソリューションを展開する独自企業として設立した。
iSTCが現在展開するのが、製造ラインの遠隔監視システム「iXacs」だ。「iXacs」では、トヨタ自動車 生産調査室で勤務した経歴があるiSTC CEOの木村哲也氏の知見からトヨタ生産方式(TPS)の考え方を活用。取得するデータを、生産数、停止時間、サイクルタイムに絞り込み、これらのデータから導き出される生産情報を定義することで改善につなげている。データの収集には独自センサーを後付けし、これを送信機に集めて、無線通信で収集する。
利用企業数は現在80社以上となっており、情報取得を行っているライン数は600ライン以上だとしている。「愛知県の企業が約4割と多いが、北海道から鹿児島までさまざまな地域から引き合いをいただいている。加工業が多いように見られがちだが、金型などの一品モノの加工や多品種少量生産の製造業からも評価を得ている」と木村氏は利用企業について語っている。
ただ、これらの現場データを見える化しそれを示すだけでは、経営判断を促す経営のKPI(重要業績評価指標)とはなりにくい。iSTC CEOの木村哲也氏は「生産個数、稼働時間、停止時間、サイクルタイムの各指標を、全てのラインで並べるだけでは、多すぎて、全体的な課題や影響度が把握できない。優先順位なども付けにくかった」と語る。
そこで、新たに開発したのが、これらの指標を金額的価値に換算し、経営判断を行いやすい形で示す「IoT経営ダッシュボード」である。「例えば、同じ可動率(べきどうりつ)60%の生産ラインで、片方のラインは1日の生産台数が100台、もう一方は1日10台だったとする。これであると、100台のラインの改善に取り組みがちだが、製品単価が、100台のラインが3万円、10台のラインが50万円だったとしたら、生産金額やロス金額は10台のラインの方が大きくなる。金額換算することで、どちらを優先すべきかが分かるようになる」と木村氏は価値について語る。
「IoT経営ダッシュボード」はこのように、「iXacs」で得た現場データに、製品の金額情報を掛け合わせ、金額的な影響をそのまま示したダッシュボードである。日次や累計の生産金額を示す他、生産金額や稼働時間、ロス金額などの指標ごとに、高パフォーマンスのラインと低パフォーマンスのラインなどの上位を示すことができる。これにより、低パフォーマンスのラインに対し、撤退や価格見直し交渉、改善活動の強化、寄せ止めなどの判断を下すことができるようになる。
木村氏は「例えば、生産金額の低い生産ラインについては、製品として撤退したり、価格の見直し交渉を行ったり、1本のラインで複数製品を扱うように寄せられないかを検討したり(寄せ止め)する判断が行える。また、稼働時間で見た場合に負荷が高いラインについては改善活動を指示したり、低いラインについては寄せ止めしたり、次のアクションにつながる判断が行える。『iXacs』は現場の改善ツールだがさらに経営のサポートツールへと発展させられる」と語っている。
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