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» 2021年08月19日 10時00分 公開

生産を開始する前に設計者がすべきことアイデアを「製品化」する方法、ズバリ教えます!(10)(3/3 ページ)

[小田淳/ロジ,MONOist]
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中国で多発する不良とその原因

 以下に、中国で多発する不良に関して2つ実例をお伝えする。中国で発生する不良はとても基本的なところに原因があるものがほとんどだ。よって、これらの不良の原因とその対策から、“設計者が生産前に製造ラインですべきこと”の基本を理解してもらえると思う。

適切な位置に取り付けられていないガスケット

 図5の基板の赤色矢印で示した枠内に導電性ガスケットを取り付けなければならない。作業者もそれをもちろん理解している。しかし、少しずれていても大きな問題は起きないだろう、という作業者の希望的観測(これも中国人の国民性)からこのようになってしまっている。

枠内に導電性ガスケットを取り付けなければならない 図5 枠内に導電性ガスケットを取り付けなければならない [クリックで拡大]

 このようなケースの対策としては、(1)作業標準書に取り付け位置の記載があるか確認する、(2)目視かカメラを用いインライン検査を行う、(3)治具を作製し枠内にしか取り付けられないようにする、などが考えられる。いずれにせよ、生産開始前に、このような不良が発生する可能性がないことを製造ラインの製造技術の担当者と話し合い、その対応をしておくことは設計者の仕事である。

︎ビス留め順を指定していなかった板金部品の固定

 液晶モジュールがあり、これに横長の板金部品を10本のビスで固定することで、そのモジュールは完成する。ところが、この板金部品が若干反っていたせいもあり、ビス留め順が変わってしまったことによって、一部のビスが浮いてしまうという事態が起きた。全てのビス留め順のパターンでビス浮きの検証をしているわけではないため、ビス留め順の違いによってビス浮きの不良が発生する可能性がゼロであることはあり得ない。よって、ビス留め順は指定する必要があったのだ。日本の優秀な製造ラインでは、もしビス留め順を設計者が指定していなければ、製造技術の担当者が順番を決めて設計者の了承を得て作業標準書に記載する。しかし、中国では特に指定がなければ、作業者が自分のやりやすい順番でビスを留める。そうなると、不良が発生する場合があるのだ。このようなケースの対策としては、(1)ビス留め順を決める、(2)作業標準書に記載する、(3)量産開始前に作業を確認する、などが考えられる。生産開始前に、これらを製造ラインの製造技術の担当者と決めておくのは設計者の仕事である。それ以外にも次の方法がある。

  • 板金部品にビス留め順を刻印する
  • プロジェクターで板金にビス留め順を投影する
  • インライン検査でカメラを用いビス留め順を監視し、間違えればアラートを出す
  • インライン検査でビス浮きを判断する

 導電性ガスケットの位置の話に関しては、製品の組み立て時に取り付け位置が指示されていないことはあってはならないし、正規の取り付け位置以外には取り付かないようにしたい。ビス留め順の話に関しては、製品の組み立て時に部品の取り付け順が決まっていなければならないし、それを作業者に明確に指示する方法をとっておきたい。そして、これらの両方に関して、もし取り付け作業を間違ってしまった場合には、インライン検査によって不良と判別できる手段を持っておくことが最もよい。

 設計者の仕事は設計を行い、その後部品メーカーが作製した部品を確認することだけではない。自分の部品が不良なく生産されるような製造ラインが構築されているかの確認を行うことも大切な仕事であることを忘れてはならない。 (次回へ続く

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筆者プロフィール

小田淳

小田淳(おだ あつし)

上智大学 理工学部出身。ソニーに29年間在籍し、メカ設計者としてモニターやプロジェクターを製品化する。モノづくりのベンチャー企業の方とお話する中で、「製品化」という知識がないばかりに、適切ではないエンジニアを採用してしまった、売っても損をする、製品が法規制を守っていなかった、などの問題を抱えている企業が多くあることに気付く。素晴らしいアイデアと志を持ちながら、多くの資金と時間を浪費している状況を目の当たりにし、コンサルや研修を始める。製品化のいろはコンサルタント ロジ代表。

ロジ Webサイトhttps://roji.global/

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