工場における生産管理の根幹となる「工程管理」について解説する本連載。第7回は、各工程を流れている仕掛かり品を確実に把握する「現品管理」について説明する。
生産活動を統制していくためには、各工程を流れている仕掛かり品(材料、部品、半製品など)について、「何が、どこに、幾つあるか」を確実に把握しておく必要があります。この現品把握を行い管理していくことを「現品管理」あるいは「現物管理」と言います。
理論的には簡単なことなのですが、実際に行う場合に大変困難な作業になることは確かです。だからこそ、丁寧な現品管理によって、スムーズな工程管理と高い生産性を達成できるのです。工場内の各工程には多種多様な仕掛かり品が流れていますので、各工程を経ていくうちに、次第に紛失や破損、数え間違いなどが重なって、正確な現在量の把握が困難となり、帳票上の数と実数が一致しなくなることがしばしば起こります。
昨今の現場監督者の話では、材料や部品の入出庫、不良品や紛失品の再製などが、伝票発行の煩わしさから伝票で取り扱うことなしに自由に出し入れが行われている状況が頻繁に発生しているとのことです。これでは、利益を上げていくことに対して、みすみす機会損失を招いていると言わざるを得ません。
材料倉庫や部品倉庫、製造現場、検査場、製品倉庫などの一時停滞品や保管されている材料、部品、製品などの数量を完全に把握するためには、以下に挙げる9つの項目に日頃から配慮しておく必要があります。これらを通して、「現品管理」がいかに重要なことであるかを理解していただきたいと思います。どのような状態の物であれ、顧客にお届けする大切な商品であることには間違いありません。何よりも、私たちや関係する人たちが心を込めて造った商品です。それを紛失したり、廃棄したり、不良にしてしまったりすることは許されないのです。
⇒連載「工程管理は、あらゆる現場問題を解決する」バックナンバー
生産現場における現品管理は、生産計画に基づく生産資材の調達から製造過程の中で、生産資材を最も適切に、安全に、確実に管理することであり、その目的は、日々の生産活動をより円滑に遂行させることです。換言すれば、「何が、どこに、幾つあるか」を常に明らかにしておくことであるといえます。
このルールの運営に当たっては当然のことながら、最小コストで最大の効率を上げなければなりません。しかしながら、現品が不規則な状態で種々の取り扱いを受けるためにトラブルが多発することが問題として挙げられます。すなわち、工程管理業務の大部分は、机上で処理されるものですから、事務のIT(情報技術:Information Technology)化あるいはIoT(モノのインターネット:Internet of Things)の発展とともに、次第に業務の高度化が計られていくのですが、現品管理の面では、これに合わせて飛躍的に改善し、合埋化することが困難な点が多いため、容易には進められない側面があります。
現品管理は、現場作業の進行に直接に結び付いていますので、抽象論や机上論では片付けられないということの他に、現品管理の領域が仕掛かり品や現場に限定されないということも問題としてあります。すなわち、現品管理においては、運搬にしても、保管にしても、広義の棚卸資産の全体(材料〜仕掛かり品〜製品)を対象として、その範囲も現場のみにとどまらず、資材や製品の動くところ、または取り扱われる場所で複数の部門を対象として広域に適用されるものですから、広い視野と高い見地に立脚して、総合的に問題の解決に当たることが必要とされます。特に、外部に発注する際の外注先は、自工場の延長という性格を持っていますので、この問題についても重要度は非常に高いのですが、本稿では主として、仕掛かり品を対象として、工程管理の立場から取り上げることにします。
いずれにしても、この現品管理が不確実で、実際の現物の数量が、現品管理データと著しく懸け離れるようになってくると、以下の問題点が発生してしまいます。このような傾向は、生産量が増すにつれてその影響がさらに大きくなるものです。そこで現品管理は、ある意味、地味な業務ではありますが、これを工程管理業務の改善の第一歩として取り上げていかなければなりません。
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