このようなアーキテクチャおよび関連技術を踏まえ、NCCoEは、図5に示すようなソリューションアーキテクチャの例を示している。
上記のソリューションアーキテクチャでは、エッジ側にBYOD環境のデバイス、ローカル側にエンタープライズリソース(モバイルユーザーデータ、電子メールサーバ)とVPNゲートウェイ、クラウド側にモバイル脅威防御や、エンタープライズ・モビリティ管理(EMM)サーバ、アプリケーション審査サービスを配置したハイブリッドクラウド型のプラットフォームを採用している点が注目される。
前述のHHSの「医療におけるセキュアなテレワーキング」(関連情報、PDF)では、BYOD環境下のクラウド移行についても触れており、「オンプレミス」「IaaS(Infrastructure as a Service)」「PaaS(Platform as a Service)」「SaaS(Software as a Service)」の4つを提示している。医療テレワークの場合、SaaSを選択するケースが多いが、移行後も、アイデンティティー/アクセス管理、転送データや保存データの暗号化/鍵管理など、クラウドユーザー側の責任範囲は存在するので、注意が必要だ。
なお、NCCoEは、今回公開されたBYODセキュリティ技術指針草案に先立ち、2020年9月15日に「SP 1800-21 モバイルデバイスセキュリティ:会社所有デバイスの個人利用(COPE)」(関連情報)を公開している。また、本連載第25回で取り上げた「NIST SP 1800-8:医療提供組織における無線輸血ポンプのセキュア化」(関連情報)や、第58回で取り上げた「遠隔医療の遠隔患者モニタリングエコシステムのセキュア化:医療セクター向けサイバーセキュリティ」(関連情報)、「SP 1800-1:モバイルデバイス上の電子健康記録(EHR)」(関連情報)、「1800-24:医用画像保存通信システム(PACS)のセキュア化」(関連情報)など、医療機関の視点に立った医療サイバーセキュリティに関する技術評価研究も積極的に行っている。
米国市場向けに医療機器やデジタルヘルス関連製品・サービスを提供する企業は、医療テレワークおよびそれに付随する技術・マネジメント動向に注目しながら、製品開発を行う必要がある。特に、院内に閉じた環境とBYOD環境では、プライバシー/サイバーセキュリティリスク評価の前提条件が全く異なるので、注意が必要だ。
笹原英司(ささはら えいじ)(NPO法人ヘルスケアクラウド研究会・理事)
宮崎県出身。千葉大学大学院医学薬学府博士課程修了(医薬学博士)。デジタルマーケティング全般(B2B/B2C)および健康医療/介護福祉/ライフサイエンス業界のガバナンス/リスク/コンプライアンス関連調査研究/コンサルティング実績を有し、クラウドセキュリティアライアンス、在日米国商工会議所、グロバルヘルスイニシャチブ(GHI)等でビッグデータのセキュリティに関する啓発活動を行っている。
Twitter:https://twitter.com/esasahara
LinkedIn:https://www.linkedin.com/in/esasahara
Facebook:https://www.facebook.com/esasahara
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.