現場マルチネットワークサービスの事業戦略は「エッジデバイスを含むエンドツーエンドのサービス提供」「マルチな無線ネットワークでのデータ連携の実現」「オンサイト、リモートのサポート体制で顧客の現場のDXを支援」の3つから成る。
「エッジデバイスを含むエンドツーエンドのサービス提供」では、無線事業で培ってきたネットワークに加えて、タブレット端末やウェアラブルカメラ、監視カメラなどのエッジデバイス、そして2020年7月に発表した新事業「現場センシングソリューション」に代表されるセンシングのためのソフトウェアやアプリケーションに加え、導入初期段階のコンサルティング、SI/SE、フィールドサポートまでを一括で提供する。
その事例となるのが、Daigasグループ向けに提供したプラベートLTEの導入による現場DXだという。また、パナソニック自身でも物流倉庫や工場において、現場マルチネットワークサービスを活用した自社実践を進めている。
「マルチな無線ネットワークでのデータ連携の実現」では、プライベートLTE、ローカル5G、Wi-Fiの3つのネットワーク技術をラインアップしている。プライベートLTEでは、Daigasグループ向けの事例にあるように既に2.5GHz帯の自営等BWA(Broadband Wireless Access)システムを用いるサービスを提供しているが、2021年6月には1.9GHz帯のsXGP(shared eXtended Global Platform)方式を用いたスモールセルにも対応する予定だ。
ローカル5Gは、サブ6(Sub-6)と呼ばれる6GHz以下の4.6G〜4.9GHz帯と、制御信号とデータ送信ともに5Gを用いるSA(Stand Alone)構成による提案を進める。ローカル5Gに対応するシステムは2022年4月に発売する予定。必要な機能、規模に絞った仕様とすることで、コアネットワーク装置と基地局の組み合わせで従来比5分の1以下の価格で提供するとしている。なお、ローカル5Gで利用できるミリ波の28GHz帯については「ミリ波は扱いにくく、ネットワーク展開が難しい」(奥村氏)としており、当面は対応しない方針だ。
Wi-Fiについては、既にIEEE 802.11ac対応のアクセスポイントを「WINDIO」ブランドで展開しており、2021年10月には次世代規格であるWi-Fi6に対応した製品を投入する計画である。
パナソニックとして強みにしていくのが、これらマルチな無線ネットワークを5Gのコアネットワーク装置で一元的に管理できるようにするマルチアクセス技術だ。プライベートLTEとローカル5Gに加え、SIMカードを持たないWi-Fiで接続する機器の認証も行えるようにする。この一元管理によって図れるコスト削減が大きなメリットになる。
また、同社が映像技術で培ったAV-QoS技術では、5Gの超大容量帯域に追従する可変レートコーデックにより、無線の可用帯域変動に合わせて映像を伝送できるという。
「オンサイト、リモートのサポート体制で顧客の現場のDXを支援」では、顧客に加えて共創パートナーへのサポートも充実させていく。2021年4月からの新事業体制の中でネットワークSE20人を設置して、コンサルティングからSI/SEまでの提案力を強化し、パナソニックが新たに提案を進めたい業界向けのパッケージソリューションの構築を推進する。なお、パートナーとの共創では、パナソニック 佐江戸事業場(横浜市都筑区)に設けたローカル5Gラボを活用していく。
今後の事業展開では、パナソニックが得意とする公共、道路、プラント、空港、鉄道、CATVなどは顧客ごとにカスタマイズする直販とする一方で、工場、物流・倉庫、商業施設、スマートシティー、スタジアムなどは共創パートナーと構築するSIerでも取り扱い可能な分野ごとのパッケージサービスにより展開を広げる。将来的には、クラウドベースのサービスも想定し市場の裾野を広げていくことも想定している。
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