5G 人からモノへ 〜「未踏の時代」迎えた無線技術 特集

西日本初のローカル5Gオープンラボが開設、2020年度内にSA方式の実証実験を開始製造業IoT

オプテージは、本社が入居するオプテージビル(大阪市中央区)の3階と21階に、ローカル5Gの周波数を用いた実験試験局でのオープンラボ「OPTAGE 5G LAB」を開設した。ローカル5Gで割り当てられた28GHz帯を用いたオープンな実験施設は西日本初だという。

» 2020年06月22日 10時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

 関西電力子会社のオプテージは2020年6月17日、本社が入居するオプテージビル(大阪市中央区)の3階と21階に、ローカル5Gの周波数を用いた実験試験局でのオープンラボ「OPTAGE 5G LAB」を開設した。ローカル5Gで割り当てられた28GHz帯を用いたオープンな実験施設は西日本初だという。同社は現地で会見を開いた他、オンラインでも報道陣にラボの設備などを公開した。

オプテージの「OPTAGE 5G LAB」 オプテージの「OPTAGE 5G LAB」(クリックで拡大) 出典:オプテージ

 ローカル5Gとは、「超高速」「超低遅延」「多数同時接続」を特徴とする5Gを、通信キャリア以外の企業や組織が局所的に利用できるようにするための枠組みである。2019年12月から、総務省が28GHz帯を用いた無線局免許の申請の受付を開始しており、オプテージも2020年3月に実験試験局の免許を取得している。

 オプテージ 経営本部経営戦略部 担当部長の南部亮志氏は「2019年7月にプロジェクトチームを立ち上げてから、ちょうど1年の節目でこのラボを開設することができた。ただしこれは、さまざまな顧客やパートナーと意見交換を進めていく上での始まりにすぎない。このラボを通じて、日本の産業成長に貢献してきたい」と語る。

2020年度後半から顧客の現場環境で実証実験を開始

 同ラボでは、ローカル5Gの28GHz帯とプライベートLTEの2.5GHz帯を使用している。制御信号に既存のLTEを、データ送信に5Gに相当する新技術を用いるNSA(Non-Standalone)方式だ。展示ルームの3階と検証ルームの21階、それぞれに無線基地局とアンテナ、モバイルルーター型の5G端末を設置しており、5Gの「超高速」や「超低遅延」といった性能を体験できるようになっている。

 ラボのコンセプトは、「5Gを体験する」「5Gの技術を知る」「5Gを活用し、未来を創る」の3つ。「5Gを体験する」では、21階に設置した鉄道ジオラマ模型の4K映像を3階にリアルタイムで伝送する「5Gリアルタイム4K映像伝送」や、鉄道ジオラマ模型を5GとLTEで遠隔操作してその違いを実感できる「5Gリアルタイム遠隔操作」、21階のスタッフがVRシステムを使って演じるキャラクターによる「バーチャル接客システム」などのデモを用意している。

5Gを体験する 「5Gを体験する」で用意した「5Gリアルタイム4K映像伝送」や「5Gリアルタイム遠隔操作」、「バーチャル接客システム」(クリックで拡大) 出典:オプテージ

 「5Gの技術を知る」については、21階の検証ルームでの測定器を使ったっ性能測定や、Wi-Fi、LTEとの比較検討、検証ルームに併設するセミナールームでの講習会を通して5Gへの理解を深められるようにする。そして「5Gを活用し、未来を創る」に向けて、21階の検証ルーム内に、顧客やパートナーがローカル5Gを自由に利用できる環境を提供するとしている。

5Gの技術を知る5Gを活用し、未来を創る 「5Gの技術を知る」(左)と「5Gを活用し、未来を創る」(右)の取り組み(クリックで拡大) 出典:オプテージ

 オプテージは、オープンラボの公開を経て、2020年度後半から顧客の現場環境でのローカル5G活用に向けた実証実験を始めたい考え。足元では、工場やプラントからの引き合いが強く、2020年度後半〜2021年にかけて数件の実証実験を始められる見込みだ。

 なお、オープンラボの環境についても、LTEを用いずに制御信号もデータ送信も5Gを用いるSA(Standalone)方式への進化を検討している。そのために、2020年内に4.8GHz帯を用いたSA方式の実証実験を始める予定だ。

今後の「OPTAGE 5G LAB」の展開 今後の「OPTAGE 5G LAB」の展開。現在のNSA方式からSA方式への移行を検討している(クリックで拡大) 出典:オプテージ

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