自動車部品製造業が「見える化」システムを開発しITベンダーになるまでMONOist IoT Forum 大阪2019(後編)(2/3 ページ)

» 2019年05月30日 11時00分 公開
[三島一孝MONOist]

「見える化」の本質的意味と、成果を出す運用のポイント

 開発したシステムは「稼働状況表示」と「改善ツール」の2つの役割を担う。木村氏は「システムを使って見える化するだけでは価値は生まれない。現場で何らかの改善につなげることで価値を生む」と述べる。「改善ツール」としての役割では「生産数」「停止時間」「サイクルタイム」を取れるようにしたという。

 「生産数は、稼働時間から停止時間を引いてサイクルタイムで割ったものだ。これらが見えることで最適な生産性改善の打ち手が取れるようになる。製品の原価を調べると最終的にどれだけの生産数を作りたいかという目標が出てくる。時間当たりの生産個数を増やすためには、サイクルタイムの短縮か停止時間の削減に取り組むしかない。これらの取り組みには近道はなく、地道にさまざまな試行錯誤を重ねていくしかない。こういう作業は人でしかできないところだ。ただ、これらの情報が常に見える状況を作るところで、改善のサイクルを早めることができる」と木村氏はあらためて運用の重要性を強調した。

 「見える化」システムを使って、製造現場で成果を出す運用のポイントについて木村氏は以下のような点を挙げる。

  • 毎日地道にデータを見る
  • 見えるだけでは改善しないので対策や行動に落とし込む
  • データは現場で使う(オフィスでの会議などではだめ)
  • データは良い方向で使う(監視されていると思わせない。ほめるために使う)
  • 目標数値は「必要なもの」という発想で立てる(できることではない)
  • 経営者も丸投げではだめ。一緒に考える
  • 完璧を求めずに割り切りが必要
  • 経営者は素早く決断する(稟議書などの手続き重視ではなくスピードで勝負する)

 これらの運用を徹底した結果、旭鉄工の西尾工場でのフックを作る生産ラインでは、平日の残業ゼロを実現しながら、出来高を69%高めることに成功したという。これにより従来は追加のライン増設により1.4億円の設備投資を検討していたところが不要になった。その他、旭鉄工で見える化を実施した生産ラインでは、全体で平均34%の改善を実現。さらに21ラインでは50%以上の改善効果を得られたという。「最終的には設備投資で4億円の削減効果、労務費は年間1億円以上の削減効果があった」と木村氏は語る。

 これらの取り組みは生産性改善だけではなく品質向上にも大きな効果を生んでいる。見える化システムの導入前に比べ、納入不良は75%削減できたとする。木村氏は「見える化による停止撲滅と風土改革などが、品質改善にも大きな効果をもたらした」と述べている。

 旭鉄工ではさらにこれらの取り組みを1つの工場内だけでなく、工場間や企業間に広げる取り組みを進めている。「Connected Supply Chain Management」とし、タイの現地法人や仕入れ先などの工場と結び、生産状況などを一元的に把握できるようにし、サプライチェーン全体でのスループット向上につなげていくことを目指している。

180社以上に導入し成果

 これらの実績を基に、開発したソリューションをi Smart Technologies外部に展開するが、既に180社以上での導入実績があるという。80%以上が中小製造業で、部品加工や金型加工、瓦、織物、菓子、薬品など幅広い業界に導入する。木村氏は「大手ベンダーが提供するソリューションは高機能ではあるが、価格は数千万円で導入に数カ月かかるというものがほとんど。i Smart Technologiesでは、10万円程度で導入できさらに最短1時間で『見える化』できる。シンプルかつ必要十分な機能を備えているのが特徴だ」と語る。

 さらに導入した企業の200ラインを調査した結果、トータルで5カ月後の可動率は12%上昇。可動率が上がったラインだけを見ると、2カ月後、4カ月後と継続的な上昇が見られたという。「成果が出ていないところは『データ活用を阻む3ざる』が発生している。見ざる(データを見ない)、言わざる(データを共有しない)、使わざる(データを使わない)だ。システムを入れるだけではなくデータを見て、共有し、改善を実行する仕組みが重要だ」と木村氏は強調。旭鉄工での実績を基にした「改善ボード」や「ラインストップミーティング」「横展卒業式」などの取り組みなども併せて紹介することで、成果につなげることを訴えている。

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