ソニー決算は税引前利益が初の1兆円超え、半導体は1000億円の設備増強を検討製造マネジメントニュース(2/2 ページ)

» 2019年05月01日 10時00分 公開
[三島一孝MONOist]
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課題のモバイル事業は事業規模半減に向けて着々

 5G時代を見据え事業継続に向け、収益性確保に向けた構造改革を進めるモバイル・コミュニケーション分野については、スマートフォン端末の販売台数が2017年度の1350万台から2018年度は650万台と半減。大幅な収益性悪化となった。ただ、既に進めている構造改革費用を織り込んだ状況である。同分野は2020年度の黒字化に向けて、オペレーションコストを50%削減する方針を示しているが、新たに中国の北京拠点の閉鎖を決めた他、中近東、中南米エリアからの撤退を決定。収益性の維持できる領域だけに絞り込んで生き残りを進めている。

 十時氏は「モバイルコミュニケーション分野の構造改革は基本的には計画通りに進んでいる。2018年度は971億円の赤字となったが、2019年度は470億円の赤字と半減させる計画で、2020年度に反転する」と語る。

photo モバイルコミュニケーション分野の2018年度の業績(クリックで拡大)出典:ソニー

中期経営計画の事業別営業利益目標は取り下げ

 ソニーでは2018〜2020年度の3カ年で中期経営計画を推進中だが、この中期経営計画の目標についても見直しを行う。全体の目標としては、累積営業キャッシュフロー2兆円ということで変化はないが、各事業部門別での営業利益目標については今回取り下げることを明らかにした。

 十時氏は「2018年度の期初に、業績見通しを作りそれを前提に中期経営計画を立てたが、その時の営業利益見通しは6700億円だった。結果は8942億円となり、この段階で大きな乖離が生まれている。この全体の乖離をセグメント別に見ていくと、それぞれがこの1年間での事業環境変化の影響を受けている」と変化の1年だったことを強調する。

 具体的には「ゲーム事業はソフトウェアのビジネスが予想以上に好調だったが他、音楽事業は大型の買収で前提そのものが変わっている。モバイルコミュニケーション分野の縮小の方向性を決めたのも2018年度内でここも前提が変わっている。半導体事業は、数字よりも多眼化、大判化で需要の変化が起きている。これらが1年で起こったことだ。こうした変化がある中で、2020年度までの断面だけで営業利益を切り出して論じるのはフェアではないと考えた。当初掲げた3年累計の営業キャッシュフローで論じた方が事業価値を示すには意味があると考えた」と十時氏はあくまでも中長期の成長性を重視する考えを述べている。

 現状では累積営業キャッシュフローの3カ年累計では既に2兆2000億円を超えており、半導体の設備増強を決めた場合、さらに1000億円の増加がある見込みである。十時氏は「引き続き長期的視野で経営を進めていく」としている。

photo モバイルコミュニケーション分野の2018年度の業績(クリックで拡大)出典:ソニー
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