住友重機械工業は2019年1月24日、同社と同社子会社で発生した不適切検査の4事案について記者会見を開き、現時点で判明している経緯や原因、再発防止策を発表した。同社グループでは2018年6月より幅広い製品、サービスで不適切な検査や行為が明らかとなっており、同社には抜本的な再発防止策を講ずる姿勢が求められる。
住友重機械工業は2019年1月24日、同社と同社子会社で発生した不適切検査の4事案について記者会見を開き、現時点で判明している経緯や原因、再発防止策を発表した。同社グループでは2018年6月より幅広い製品、サービスで不適切な検査や行為が明らかとなっており、同社には抜本的な再発防止策を講ずる姿勢が求められる*)。
※) 関連記事:住友重機械で不適切検査、半導体製造装置部品や大型減速機が対象
住友重機械グループにおける一連の事案で口火を切ったのが住友建機グループと住友重機械建機クレーン、住友ナコフォークリフトグループの3社。3社は2018年6月20日、同社らが取り扱う建機や特殊車両について分解整備の不備や記録簿未発行など道路運送車両法に反する行為を行っていたことを発表した。
その後、同年7月27日と8月24日に住友ナコフォークリフトグループと住友建機グループがそれぞれ追加の不適切行為を発表し、10月1日には住友重機械ハイマテックスが圧延ロールに関して検査結果の改ざんを公表。同社グループにおける2018年に公表した不適切行為は6事案にも上り、今回発表を含めると同社グループで発覚した不適切検査は10事案に達する。
今回発表された不適切検査は、住友重機械搬送システム、住友重機械ギヤボックス、住友重機械精機販売、そしてグループ親会社である住友重機械工業でも行われていたことが明らかとなった。住友重機械工業 社長の別川俊介氏は「この度の品質に関する不適切な検査について、顧客や取引先を始めとした関係各位に大変な迷惑を掛けた。深くお詫び申し上げる」と陳謝した。
今回不適切検査が明らかとなった製品、サービスと現時点で判明している影響社数は、半導体製造装置のコンポーネント部品である封止プレスで4社214件、動く歩道の定期点検サービスで3社4基、発電機や圧縮機などに用いられる大型減速機で7社41件、スキーリフトなどに用いられる減速機のオーバーホールサービスで15社29件。このうち、封止プレス、動く歩道の定期点検サービス、減速機のオーバーホールサービスでは同社による社内調査が終わっていないとし、調査の進展により影響が広がる可能性も示唆した。
いずれの製品やサービスについても、検査自体の未実施や顧客が規定する検査条件の逸脱、顧客用の検査成績書へ記入する実測値や担当者などの改ざんがみられた。特に封止プレスの不適切検査では、1人の試験担当者が成績書を作成する表計算ソフトのプログラムを不正な内容で作り上げていたことも要因とする。不正なプログラムでは入力した検査実測値から異なる数値が出力されるようになっており、仕様内に入っている製品についても同様に別の数値へ書き換えられ検査データが改ざんされた。
品質保証部門も成績書の記載数値から仕様に対する適合有無を判定しており、実測値と試験成績書の照合を行っておらず不適切検査を防ぐことができなかった。なお、「プログラムを開発した従業員は既に退職しており動機などは把握できない」(同社 内部統制本部担当執行役員 森田裕生氏)という。
別川氏は、新たに不適切検査が発覚した契機について「2018年にグループ会社で不適切検査が判明したことを受け、2018年9月11日にグループを挙げた品質管理総点検を指示した。このタイミングで判明した」と説明する。
記者から、住友重機械工業が所属する日本経済団体連合会(経団連)が2017年12月、加盟社に対して品質管理の自主調査を依頼したタイミングで不正が判明しなかったのかという質問に対しては、「2017年12月に経団連の説明会があり、2018年1月〜2月に点検を行ったが、今回不適切検査が判明したサービス事業部門などは対象外としていた」(別川氏)と回答していた。
これまでに行った社内調査から再発防止策として、コンプライアンスの一層の強化、検査プロセスの見直し、自動記録装置の導入、業務品質の改善などを実施するというが、具体的な内容は見通しにくい。
同社は2019年1月15日に特別調査委員会を立ち上げた。調査委員会により外部の目線から一連の事案に対する経緯や原因、再発防止策の提言を行うとする。一方で、事案が広範にわたり同社製品に関する深い知識を必要とするとの理由で「調査委員会は社外取締役と社外監査役で構成する」(森田氏)方針だ。社外弁護士など外部有識者を調査委員会に含めないとみられる。
調査委員会が提出する調査報告書は、企業からある程度独立した主体が調査を行うことで記載内容に一定の信用が生まれる。不適切検査を起こした他社の調査委員会についても、社外弁護士やデジタルフォレンジック業者などが調査協力者として含まれる場合が多い。会見では、記者より「調査委員会で主体となる社外取締役や監査役は取締役会で本日の発表内容を承認しているのに、調査委員会で徹底的な調査ができるのか」という疑念の声も上がっていた。
特別調査委員会は2019年3月末をめどに報告書を提出する予定だ。この報告書を受ける予定の住友重機械グループは実効性のある再発防止策を打ち出せるのか、注目が集まる。
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