製造業が大目標として目指す、顧客それぞれの要求を満たすマスカスタマイゼーションへの道筋で異品種少量生産は実現して行かなければならない課題だ。とはいえ、異品種少量生産を効率よく実現することは容易ではない。そのため、佐賀工場でもさまざまな取り組みを進めて、異品種少量生産のため日々の改善を図っている。
例えば、ERPとの連携では、作業を見える化するデジタルアンドンや、データを見える化するトレーサビリティーを導入している。また、生産性を向上するために、低コストで工数を削減できる設備の開発にも取り組んでいる。これらの設備は「簡単なモノであれば数日、複雑なモノでも数週間で組み上げられる」(高橋氏)ということで、その時々の必要に応じて用意できるようになっている。
さらに、この異品種少量生産という課題に多くの製造業が取り組んでいることから、佐賀工場はCNS社が製造現場の「“お役立ち”のインテグレーター」になるための実証実験の場にもなっている。
2012年に建て替えで建設された佐賀工場のI棟は、パナソニックの国内工場でも最新の建屋となる。主力製品の決済端末やICカードリーダーライターを中心に、実装から手加工、組み立て/調整検査、放送、倉庫の順に、ワンフロア―で一貫生産できる体制を構築している。
一番手前にある実装ラインでは、毎朝行う設備点検作業について、一般的な紙のチェックシートを用いた手法から、タブレット端末と音声アシスト技術を用いた手法に置き換えている。点検時間の短縮は30分から20分とあまり劇的ではないものの「音声アシストによって両手が使えてハンズフリーになり、設備の点検を正しいタクトで正しく確認できるという点で効果が大きい」(佐賀工場の説明員)という。また、実装ラインにはアナログ表示の計器もあるが、この手法であれば音声入力により記録を残せることもメリットになっている。
I棟内のネットワークカメラは、パナソニックが推進している高速電力通信のHD-PLCによって接続されている。約250mの距離を100Vの電力線でつなげており「電力線がLANケーブルの代わりになっている」(佐賀工場の説明員)という。なお、工場内におけるHD-PLCの活用は100Vよりも3相200Vの方が需要が大きいが、現時点では国内での利用は規制されている。I棟では、政府の許可のもとで、3相200VのHD-PLCの実証実験も行っている。
製品と同梱する説明書のキッティング作業では、3Dカメラを用いた作業の可視化とポカヨケを行っている。液晶ディスプレイに出る指示に従って、モノ(部品)をピックアップしていくことになるが、指示と異なるモノに手を伸ばすと警告表示が出で指示が中断するようになっている。多数のモノを扱う場合、モノの置き場所が立体的に配置する場合もあり得るが、3Dカメラを用いて高さ情報を検知しているので対応可能だという。
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