藤井氏は、未来のある家族の1日を描いた映像を使って、幾つかのインタラクティベーションの事例を示した。主観的デバイスとして耳に装着する「ヒヤーリンク」、複数の小さなキューブ状のロボットが、人へのサポートが必要がどうかを判断して、機転をきかせてモノを移動させる「群ロボット」や、空間が人の意図に合わせて変化する「自在スペース」、気分や文脈に合わせて必要なものが入っている「オンデマンドボックス」、ライフログから新しいアイデアをシェアできる「共創システム」などだ。
そしてこれらのインタラクティベーションを支える技術として、さまざまなセンシングとセンシングデータを分析し推定する技術、モノが人とインタラクションするのに必要なアクチュエータやパワーエレクトロニクスの技術がある。「今回紹介した技術は夢物語ではなく、実際にさまざまな開発の取り組みを進めている」(藤井氏)という。
なお、インタラクティベーションというコンセプトは2030年を想定したものだが、センシング技術については2020年を待たずに順次導入されていく見通しだ。藤井氏は「このインタラクティベーションによって人の意図を理解するプラットフォームを提供し、人にとってかけがえのない時を作り出していきたい」と意気込む。
なお、ここでいうインタラクティベーションのプラットフォームは、グーグル(Google)やアマゾン(Aamzon.com)、マイクロソフト(Microsoft)などが展開するデータプラットフォームではなく、それらとつながり、人と近いエッジサイドで活躍するものと想定している。「当社が新しく掲げる『暮らしアップデート業』※)という方向性にとってプラットフォームは必要だ。ただし、それがデータプラットフォームである必要はなく、人のそばに存在する小さなプラットフォームでもいい。データプラットフォームにとって、エッジやデバイスは必要である以上、価値を生み出せる」(藤井氏)という。
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また、パナソニックの中でさまざまなデバイスを手掛けるAIS社が、半導体や電子部品、センサーといったデバイス技術を核としたプラットフォームを提唱している点も注目される。モノ売りからコト売りへの移行を進めるパナソニックの中で、どうしてもモノ売りにならざるを得ないデバイスはスポットが当たりづらく、黒子に近い存在になっていたからだ。
藤井氏は「デバイスは黒子ではなくメインだと考えている。さまざまな製品に用いられているチャンピオンと言っていいデバイス事業があり、その競争優位性に基づくキー技術によって、今回のインタラクティベーションのプラットフォームのようなチャレンジが可能になる。デバイスはなくならない。価値の源泉だ」と述べている。
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