既に市場に導入されているIoT関連の展示を見てみよう。例えば、チノーの監視機能付き無線ロガーがある。製薬企業をはじめとする大規模オーダーがある以外にも、1個単位でのオーダーも多いという。製薬企業の場合は、校正済みの温度計による厳密な温度管理とその効率化が目的になるが、1個単位の導入は有線接続で追加するのが難しい場所への設置などになる。温度以外にも、湿度やCO2濃度などを計測する機能を持つタイプもある。外部入出力の追加も柔軟に対応する他、管理システムも併せて販売しており、導入のしやすさをアピールしていた。
専用機器を用いないセンシングのデモを行っていたのは、Origin Wirelessだ。Wi-Fiの電波を利用して、人やモノの移動を追跡するだけでなく、子機があればその位置を50cmの位置精度で検出でき、かつ一般的に流通するWi-Fiルーターでそれを実現している。もちろん、ファームウェアの書き換えが前提となるのだが、対応するルーターをエイスース(ASUS)が開発中であり、早ければ2019年内の登場が予想される。識別した上でのトラッキングについては子機を取り付ける必要があるため、カートや無人清掃機の制御といった部分での実装になるだろうか。
また子機がなくても、Wi-Fiの電波反射を解析して、室内の人の動きや呼吸、転倒を検出できるので、介護や生存確認目的の活用も視野に入れている。人の動きを検知できるということは、ジェスチャーによるスマート家電の操作や緊急通報といったことにも対応できるだろう。また、単純に人の数をカウントする用途にも応用でき、部屋の入退室チェックにも使えるなど応用先は広い。企業だけでなく、コンシューマーからも注目を浴びそうだ。
楽天技術研究所は、ECサイト的な提案として遠隔接客システムを展示していた。遠隔操作とアバター経由の接客で、客が服を決めていくというものだ。モノとしては簡素な造りだが、周辺技術の進化傾向を見るに、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)といったxR技術により姿見でチェックしながら決めていくこともできるため、アナログ店舗と同様のことを行える期待を抱かせてくれるものだった。車両内やイベント会場にそういった環境を用意する提案もあり、この点は5Gの普及に合わせて、今後提案が増えていくであろうものだろう。
IoTタウン2018では、さまざまな企業が色んな展示を行っていたため、ピックアップしてのレポートになったが、実験的でありつつも将来的な採用を見越した展示もあれば、参入にあたり取りあえず開発してみたといったモノもあり、現状のIoTが分かるものだった。フリーダムな雰囲気が強く、参入のしやすさ、関連技術の急速な進化が起きているカテゴリーらしくもある。いずれのメーカーも「これとこれをくっつけたら面白いのではないか」からスタートしていたのが印象深く、次回開催時の変化が今から楽しみになった。
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