ロボットベンチャーのGROOVE Xは、未来創成ファンド、産業革新機構との間で、新世代家庭用ロボット「LOVOT」開発に向けて、第三者割当増資に関する投資契約を締結。その他の引受先と合計で総額64億5000円の調達となる。総資金調達額は累計で最大78億円となる見込みだ。
ロボットベンチャーのGROOVE X(GX)は2017年12月4日、未来創成ファンド、産業革新機構(INCJ)との間で、新世代家庭用ロボット「LOVOT(ラボット)」開発に向けて、第三者割当増資に関する投資契約を締結したと発表した。同年11月29日に未来創生ファンドとINCJを筆頭引受先とする最大64億5000万円の第三者割り当て増資に関する投資契約を締結した。
GXは、ソフトバンクの感情認識ヒューマノイドロボット「Pepper」の開発リーダーの林要氏が2015年11月に創業したロボットベンチャー。創業当初から2019年の製品発売に向けて、Pepperとは異なるタイプで、家庭用ロボットであるLOVOTの開発を進めてきた。2017年1月には事業拡大に向けて、本社と開発拠点を東京都中央区日本橋の人形町エリアに移転した。設立当初は、スタートアップ企業が多数入居する、秋葉原のDMM.make Akiba(東京都千代田区)を拠点としていた。
未来創生ファンドはGXの創業と同じく2015年11月に、スパークス・グループを運営者とし、同社とトヨタ自動車、三井住友銀行の3社が総額約135億円を出資するベンチャーファンドとして発足した。2017年9月末現在で、前記3社を含む全20社から出資を受け、運用額は367億円としている。同年同時期の投資案件数と実行額は33件で、160億。
「経営者が社会課題を解決しようとしているか、あるいは世の中をいかに幸せに、健康に、そして豊かにしていくか。また経営者が、どれだけの情熱をもってそれを成し遂げていくか。投資の条件としては、究極的にはそれしか見ていない。非常に難題だと思うが、(GX社長の)林氏にはぜひ成し遂げてもらいたい」(スパークス・グループ 代表取締役 深見正敏氏)。
INCJは2009年7月、リーマンショックからしばらくたった、厳しい景気の中立ち上がった。産業や組織の壁を越え、オープンイノベーションにより次世代の国富を担う産業を育成および創出することを目的に設立された官民ファンド。総額で約2兆円の投資能力を有する。「ゲームやアプリ関係といった、民間で十分資金が回りそうな分野は対象とせず、逆に(社会問題解決のような)投資の対象としづらいような分野に投資している」と産業革新機構 専務取締役 土田誠行氏は述べる。
「2009年から、日本国内の半分ほどのベンチャーに対して投資してきた。かなり貢献してきたと自負している。産業革新機構が入ることによるメリットを感じてもらえる、選ばれる投資家でありたい。社会問題を解決し、投資しづらい分野に投資しながら、収益を上げてきた。GXはLOVOTにより社会問題解決を目指し、かつ大小問わない企業の優れた技術を生かすオープンイノベーションに取り組み、かつグローバルを見据えている。そこが投資を決めた理由だ。AIやロボットなどの技術を通じて、人の幸せや豊かさを運んでいくことが私どもとしては必要だと考える」(土田氏)。
GXは「シードラウンド」である2016年1月と9月に、未来創生ファンドを複数の引受先から14億2千万円の調達を受けた。次の「シーズAラウンド」として、2017年12月18日に、未来創生ファンドとINCJから、それぞれ14億円の出資を受け、その他の引受先と合計で総額43億5000円の調達となる。その後、「シーズBラウンド」では、21億円を上限とする追加出資をINCJから受ける予定だ。GXの資金調達額はこれまでの資金調達を含めて、累計で最大78億円となる見込みだ。
GXは2017年11月29日に新役員を任命。新体制での経営をスタートした。INCJからは、同社ベンチャー・グロース投資グループのディレクターである大島怜氏が取締役(非常勤・社外)に就任している。「経営管理とビジネス面と、GXをフルサポートしたい」(土田氏)。
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