NEDOは「2017 国際ロボット展(iREX2017)」に出展し、林業用アシストスーツの試作品「TABITO-03」や、新型電動車いす型ロボット「RODEM(ロデム)」などを展示する。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は「2017 国際ロボット展(iREX2017)」(会期は2017年11月29日〜12月2日、会場は東京ビッグサイト)に出展し、林業用アシストスーツの試作品「TABITO-03」や、新型電動車いす型ロボット「RODEM(ロデム)」などを展示する。
日本政府では「未来投資戦略2017」における「Society 5.0」や、「Connected Industries」といったコンセプトを打ち出し、国が目指すべき理想の社会の構築を模索している(関連記事:世耕経産大臣がConnected Industriesをアピール「協調領域を最大化してほしい」)。
「単にそれを望むだけではなくて、実現するためには、その社会を表裏一体となって支えるような産業変革が必要である。Connected Industriesのコンセプトでは、自動車、外食産業といった、それぞれの産業のサービス単位ではなく、ロボットやAI、ビッグデータといった技術と、そこに人や組織、企業、さまざまなサービスが密接に絡み合い、しなやかに面で支える姿を示している。それらは網の目のように絡み合う」(NEDO ロボット・AI部 弓取修二氏)。
“網目の結節点”となる技術は、以下の5つだと説明し、今回の展示ブースもそれらに沿った内容となる。
全体テーマとしては、「Robots & AI for Happiness」を掲げ、ロボットやAIといった技術がかなえる安心で安全、豊かな社会の先にある幸せを見据えていくとしている。「その場限りの技術で終わってしまい、未来へつながらない技術であってはならない」(弓取氏)。
NEDOの助成を受ける、林業用アシストスーツコンソーシアムは、住友林業、森林研究・整備機構森林総合研究所、ATOUN、奈良先端科学技術大学院大学が2016年より5年間の研究プロジェクトとして構成。それぞれが林業に関する専門知識や、ロボット工学の知識といった知見を共有し、得意な課題を分担し、森林での植栽時に使用する林業用アシストスーツ開発に取り組んでいる。同コンソーシアムが開発した林業用アシストスーツのTABITO-03の試作品をNEDOブースの「サービス」で展示する。
戦後に植林された木々が、今充実してきており、伐採期を迎えつつある。その利用を進めるために、伐採後の林地の再造林が必要である。伐採においては機械化が進む一方、造林においては人力作業が多くを占めており、かつ機械化も遅れている。また全体的に労働力も減少し、労働者の高齢化も進行している。こうした課題に対応し、サスティナブルな林業にするため、造林作業の効率化が必要であるという考えが、今回のプロジェクトの背景としてある。
同コンソーシアムが開発する林業用アシストスーツは、造林作業において、傾斜面を移動する際の負荷を軽減するためのものだ。腰の左右に2カ所、それぞれの膝と、合計4カ所のモーターを搭載し、バッテリー駆動する。各関節に配置した角度センサーで作業者の姿勢を読み取って、動くタイミングに合わせてモーターが駆動する。斜面を登る際には踏み込みを補助しながら体を上に持ち上げるようにアシストし、逆に下りる際には膝を曲げにくくして体重指示を補助する仕組みだ。製品化に向けて、モーターはなくしていくという。
ユーザーの関節に対してやみくもに力を与えるのではなく、人に合った間接トルクを探索する検証も実施。モーションキャプチャーで坂道の歩行を計測し、間接トルクを導出した。個人個人や作業状況により、適切な間接トルクは異なるという。それぞれの人に合った間接トルクに調整するシステム(ソフトウェア)も併せて開発している。
造林作業現場を想定した実証実験においては、試験用登坂路(20度、15m)を往復し、筋電と歩行速度を計測した。以下のグラフは、TABITO-03の装着なしとありとで値を比較したものだ。
上のグラフでは、登坂時にはTABITO-03を着用することで筋電電圧が最大17%低下、降坂においては最大で16%低下という結果が出た。筋電とは、筋肉が動作する際に、脳から伝わって発生する微弱な電場である。電圧が高くなれば筋力が高いということになり、かつ疲労するということになる。つまり、筋電電圧が低下した分だけ、疲労しないということになる。
心拍一定時の歩行速度を測定したところ、同じ心拍数のとき、TABITO-03を着用した登坂時で未着用時比較で19%の歩行速度向上、降坂時で同27%の歩行速度向上という結果になった。
林業用アシストスーツを着用することで、地ごしらえ、植栽、下刈の3作業において20%の効率化が図れたと仮定をすれば、1ヘクタール当たりの人件費が約23万円削減可能だと試算しているという。林業用アシストスーツ1台が100万円とすれば、約4.2ヘクタール以上の作業をすれば黒字となる計算になる。今後、製品化する際には、販売価格として約100万円を想定しているという。
将来は、ビッグデータとして収集される各装着者の個別データを基に、AIで適切な間接トルクを自動的に導きだす仕組みも検討している。併せて、作業者の転倒を未然に防ぐ機構や、転倒してしまった際にエアバッグで安全確保する機構など、安全向上の仕組みも整えていく。
この林業用アシストスーツは、2020年までにプロトタイプの完成、2025年までに販売開始を目標としている。
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