「持続的なモビリティーの実現に向けて、技術によってクルマにネガティブに作用するような現象を解決する」という日産自動車の安徳光郎氏。電動化と知能化がもたらした成果を振り返る。
モノづくり専門展「日本ものづくりワールド2017」(2017年6月21〜23日、東京ビッグサイト)の特別講演に日産自動車 製品開発担当 常務執行役員の安徳光郎氏が登壇。「日産自動車における新たなクルマづくりへのチャレンジ」をテーマに自動運転技術や電動車両に対する開発の姿勢や普及に向けた課題、未来につながる新しいクルマづくりについてのビジョンを語った。
日産自動車のクルマづくりの象徴となっているのが自動運転技術と電動化だ。安徳氏は「持続的なモビリティーの実現に向けて、技術によってクルマにネガティブに作用するような現象を解決する」と説明。自動車を取り巻く“ネガティブな現象”とは次のようなものだ。
これらの解決に向けて究極の目標として掲げているのが「ゼロエミッション」と「死亡事故ゼロ」である。
ゼロエミッションに向けた取り組みの成果として、日産自動車のグローバル企業平均燃費は2015年に2005年比で36%削減。これはパワートレインの進化、車両の軽量化やさまざまな効率化の結果といえる。安全についても、日産車が関与した死亡・重症者数は2015年に1995年比で64%減少。予防安全や衝突安全の取り組みが結びついたものだ。
究極の目標を達成する手段として開発を進めているのが「電動化」と「知能化」である。安徳氏は「この2つを組み合わせて4つのネガティブ要因を消していくことにチャレンジしている。その上に、これまでにないような運転する楽しさ、クルマの中で過ごす楽しさを作り上げていきたい」と語る。
こうしたクルマづくりに対するビジョンが「日産インテリジェント・モビリティー」で、3つの価値で構成されている。1つ目がクルマがより信頼できるパートナーになることを目指す「日産インテリジェント・ドライビング」、2つ目がクルマの効率化と電動化による走りの楽しさを提供する「日産インテリジェント・パワー」だ。3つ目が、クルマと社会がつながることで生まれる新しい価値「日産インテリジェント・インテグレーション」である。
日産インテリジェント・パワーの代表例は電気自動車(EV)だ。EVの「リーフ」「e-NV200」以外にも、EVの技術を応用したシリーズハイブリッドシステム「e-POWER(eパワー)」があり、コンパクトカー「ノート」に採用されている。2020年にはバイオエタノールから取り出した水素で発電して走行する燃料電池車のシステム「e-Bio Fuel-Cell」を量産する。
リーフに対するユーザーの評価についても安徳氏は言及した。静粛性やランニングコスト、加速性能は評価が高く、75%のユーザーから「次もEVを購入したい」という回答を得ている。一方で、走行距離や充電時間、充電インフラの設置状況に対する不満も挙がっているという。
EVのさらなる普及は走行距離と充電時間の改善が必要になる。2012年のリーフはバッテリー容量24kWh、走行距離228kmという性能だったが、2015年にはバッテリー容量30kWhのグレードを追加し、走行距離は280kmまで延長した。充電時間は2012年から2015年にかけて40%短縮し、所要時間は14分前後となった。2017年に発売予定のリーフの新モデルでは、走行距離をさらに延ばし、充電時間の短縮が期待される。
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