日本自動車工業会のCAEクラウド調査タスクのチームは、MSCのユーザーイベントにおいて、クラウドCAEに関する調査の経過報告を行った。クラウドプロバイダーやソフトウェアベンダーとのディスカッションを重ねるとともに、セキュリティの調査やベンチマークなどを実施してきたという。
日本自動車工業会 電子情報委員会 デジタルエンジニアリング部会 CAEクラウド調査タスクは、2016年6月8日に開催されたMSCソフトウェア主催の「MSC Software 2016 Users Conference」において講演を行った。
CAEクラウド調査タスクは、日本自動車工業会のデジタルエンジニアリング部会 次世代スパコン検証ワーキンググループ内の取り組みとして2014年度から活動を開始した。クラウドでCAEを実施するための情報収集や調査、ベンチマークなどを行っており、2016年度までを活動期間としている。日本自動車工業会メンバーのうち現在11社が参加するとともに、クラウドサービスプロバイダーおよびITサポートベンダー6社とソフトウェアベンダー6社が協力している。
代表は本田技研工業 IT本部 システム基盤部 インフラ推進ブロック チーフの多田歩美氏が務める。ホンダではCAEリソースが不足しているという声が現場から上がっており、研究者がリソース不足に頭を悩ませることなく研究に注力する手段として、CAEクラウドの調査を日本自動車工業会に持ち掛けたという。
多田氏は「一般業務に使われるビジネス系クラウドはかなり広まっており、利用して当たり前といった状況になりつつある。だがCAEクラウドはなかなか利用しやすくはなっていない」と語った。理由の1つは、特に当初はソフトウェアベンダーが利用に制約を課していたこと、もう1つは、CAEとクラウド両方の知識を持つ関係者がほとんどいなかったことによる。そのため「クラウドのメリットとして言われるような、本当にフレキシブルで、かつ低コストのものは非常に少ない。各ベンダーなどに働きかけて、できるだけ使いやすく、各関係者にとってもビジネスが成り立つようなビジネスモデルを作っていきたい」(多田氏)という。
活動1年目の2014年度は、メンバーで勉強やクラウドサービスプロバイダーとのディスカッションを行った上、クラウドサービスに関して気になる点を洗い出し、それらについて調査を行った。その中で、CAEクラウドが実務で使用可能なことは分かってきたという。
多田氏は2015年度に実施した活動の1つとして、MSCソフトウェアとのディスカッション内容を紹介した。MSCは2012年の時点で、クラウド上で同社ソフトウェアを利用できるライセンス提供についてリリースしている。ただライセンスサーバの距離制限や、安定的にネットワークに接続できなければならないためVPN(Virtual Private Network)などを経由する必要があることに注意する必要があるという。海外クラウドの利用は問題ないが、ライセンスサーバは国内に設置するといった条件がある。
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