「面で効率性を出す」というコンセプトに近いものとして、人工衛星軌道の研究でも「コンステレーション」というアプローチがある。これは、単体ではなく、複数の人工衛星を協調動作させることで広いエリアをカバーするという考え方だ。
「私たちのものは、軌道を規則正しく動くというよりは、自由に表面を動くという意味でさらにチャレンジですが、そういう(複数台で目的を達成する)考え方が、まるきり宇宙で使われていないというわけではないですね」と袴田氏は群ロボットによる宇宙探査はとっぴなアイデアはないと語る。
袴田氏 NASAの火星探査ロボット(探査機)は、1997年のソジャーナは電子レンジほどの大きさでしたが、その次の2003年、2004年に火星に到着したスピリットとオポチュニティはゴルフカートくらいになり、現在活動しているキュリオシティは高級外車なみといわれる大きさです。いろいろな機能を持たせて大型化しており、それは1つのトレンドなのですが、失敗すると、何千億円が一瞬にして消えてしまいます。
それに対して、機能は限られながら1回のコストは安いというものを数多く分散させれば、そのうち5%や10%が故障しても、残りの90%が動いていれば目的を達成できるという発想は以前からあります。
リスク分散にもなりますし、日本が得意とする小型化にもかみ合う。アイデアはありながら、実際に手を動かしている人は少ない。そういう現状かなと思います。
小型化という観点では実際、キューブサットに代表される超小型衛星が既に実用化されている。こうした超小型衛星を“相乗り”で打ち上げることで、大学や研究機関、民間の組織の参加が可能になり、多様な目的で衛星が打ち上げられるようになっている。新規参入のハードルを下げ、多様性を広げることにつながっている。宇宙資源探査もその方向であるべき、ということなのだ。
袴田氏 考え方として、NASAみたいに高級車を打ち上げるということが必要なフェーズはもちろん出てくると思います。ただ、私たちとしては、いまの段階では高級車を1台ではなく、ミニカーを100台上げたほうが、私たちの目的にはかなっているという考え方です。
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