それにしても、今回の“事件”は考えれば考えるほど、摩訶不思議である。
なぜそのような不正を行う必要があったのだろうか。燃費競争での焦りなどと報道されているが、客観的に見ても、残念ながら、軽自動車のカタログ燃費ではトップにかなり差をつけられている。プラットフォームの違いもあって、そう簡単には追い付けそうにもない。
またi-MiEVの開発では、先行して市場投入された車種はなく、燃費(電費)うんぬんよりも、信頼性、安全性の高いクルマを作ることを最優先に開発してきた。競合すべき車両そのものも当時はなかった。このため、燃費向上のために行ったとは到底思えない。
さらに、たとえ実験部門の部長がこのような指示をしたとしても、コンプライアンスに問題のある指示であれば、課長や主任、担当者がそう簡単に納得したとも思えない。
どうしても何か別の動機があるように思えてしまう。
1つ引っ掛かっているのが、走行抵抗を計測する際に、なぜ道路運送車両法で規定される「惰行法」でなく、米国で規定されている「高速惰行法」を採用したかである。
惰行法での計測は次のようになる。まず、時速20km、30km、40km、50km、60km、70km、80km、90kmを指定速度とし、指定速度プラス時速5kmで走行させる。そこからギアをニュートラルに入れて、指定速度マイナス時速5kmまで減速する時間を測る。指定速度が時速90kmであれば、時速95kmから時速85kmまで減速する秒数を測定するということだ。
また、惰行法の試験は往路3回及び復路3回行い、その平均値を求めると規定されている。
ここで1つ疑問が生じる。
低速での試験は良いが、時速90kmのような高速の条件で試験を行おうとすれば、時速95kmまで加速できる平たん路が必要である。さらにそこから惰行減速させることから、相当長い平たんな試験路が必要ではないかと思えることだ。
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