三菱自の燃費不正、試験場所に“不都合な真実”はなかったのか和田憲一郎の電動化新時代!(20)(2/3 ページ)

» 2016年04月25日 17時00分 公開

不正の動機は何だったのか

 それにしても、今回の“事件”は考えれば考えるほど、摩訶不思議である。

 なぜそのような不正を行う必要があったのだろうか。燃費競争での焦りなどと報道されているが、客観的に見ても、残念ながら、軽自動車のカタログ燃費ではトップにかなり差をつけられている。プラットフォームの違いもあって、そう簡単には追い付けそうにもない。

 またi-MiEVの開発では、先行して市場投入された車種はなく、燃費(電費)うんぬんよりも、信頼性、安全性の高いクルマを作ることを最優先に開発してきた。競合すべき車両そのものも当時はなかった。このため、燃費向上のために行ったとは到底思えない。

 さらに、たとえ実験部門の部長がこのような指示をしたとしても、コンプライアンスに問題のある指示であれば、課長や主任、担当者がそう簡単に納得したとも思えない。

 どうしても何か別の動機があるように思えてしまう。

 1つ引っ掛かっているのが、走行抵抗を計測する際に、なぜ道路運送車両法で規定される「惰行法」でなく、米国で規定されている「高速惰行法」を採用したかである。

 惰行法での計測は次のようになる。まず、時速20km、30km、40km、50km、60km、70km、80km、90kmを指定速度とし、指定速度プラス時速5kmで走行させる。そこからギアをニュートラルに入れて、指定速度マイナス時速5kmまで減速する時間を測る。指定速度が時速90kmであれば、時速95kmから時速85kmまで減速する秒数を測定するということだ。

 また、惰行法の試験は往路3回及び復路3回行い、その平均値を求めると規定されている。

走行抵抗値を測定する技術センター(愛知県岡崎市)。右下に縮尺 走行抵抗値を測定する技術センター(愛知県岡崎市)。右下に縮尺 (クリックして拡大) 出典:Googleマップ

 ここで1つ疑問が生じる。

 低速での試験は良いが、時速90kmのような高速の条件で試験を行おうとすれば、時速95kmまで加速できる平たん路が必要である。さらにそこから惰行減速させることから、相当長い平たんな試験路が必要ではないかと思えることだ。

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