次にIoT活用の実践的アプローチとして、ここからは前述の中長期活動プランの策定および、具現化に向けたポイントを踏まえ、製品を製造・出荷した後のサービス革新領域において、どのようにアプローチしていくかに触れていきたい。
サービス革新領域において、早くから取り組みを進めてきた建設機械業界の事例からも、データを収集を開始した後、特にサービス売り上げの増加といった具体的なビジネス効果を生み出すまでにはある程度時間がかかり、早期の効果刈り取りは難しいことが一般的だ。
なぜ早期のビジネス効果刈取りが難しいのか、その理由を2つ挙げたい。
1つ目は、データ収集をスタートさせたとしても、その蓄積にはある程度の時間がかかるということである。メーカーの立場で言えば、新規製品にデータを収集する機能を搭載したとしても、出荷台数が伸びていかなければ十分なデータは収集はできない。また既に出荷済みの製品に新たにデータ収集機能を搭載していくにはハードルが高いということも要因として挙げられる。
2つ目は、先に触れたように、業務面とシステム/データ面でしっかりと見直しを行い、IoTの活用基盤を整えていくにも時間がかかることにある。そこでこれらを考慮してプロジェクト推進のアプローチを考えてみた場合、まずはデータの収集にかかる期間に、データを活用する業務・既存システム/データの改善に取り組み、準備を整えるのが賢明と考える。
そして中長期活動プランとして、IoTの導入・展開のステップを定義し、ステップごとにその段階で出せる効果を明確にする。初期段階にデータ収集・蓄積と並行して業務面とシステム/データ面の整備を行っていくことで、実際にデータが蓄積されてきた段階でIoTデータの活用がスムーズに行われるようになり、目標としていたIoTの効果刈取りが可能となってくるのである。
中長期の計画というと、業務効果は「絵に描いた餅」に捉えられてしまうことも多いが、段階的に計画していくことで確実に効果を享受することができる。また、時には想定していなかった発見や、付帯的な効果が生まれるケースも往々にしてある。
IoTを活用して成果を具体化するまでには、程度の差こそあれ、時間と労力がかかる。しかしながら、それぞれが目指すゴールを設定し、それに向けて組織が一枚岩となり、先に述べた準備やアプローチを行うことができればゴールまでの道筋ができる。そうなればプロジェクトを着実に進めていくことができるのではないかと考える。
また、データが蓄積され、業務データも横串で管理できるようになれば、これまではできなかったさまざまな角度からの分析が可能となり、サービス革新領域だけではなく、その他の領域においてもIoTを活用できる可能性が出てくる。さらに新しいビジネスの立上げにつながる可能性も生まれるだろう。次回は製品の製造工程である「生産革新領域」に関してCPSの考え方を通じ、さらなるIoT活用の可能性を考えていく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.