MathWorks Japanは記者説明会で、使用ハードルの高い「MATLAB」をさまざまな現場で使えるよう、改良を進めていると発表した。解析ツールとして高く評価されているMATLABだが、同社ではさらなる普及を目指し「どこでもMATLAB」などの新機軸を推進していく。
The MathWorksの日本法人であるMathWorks Japan(以下、マスワークス)は2015年10月16日、MATLAB活用に関する記者説明会を行い、今後の戦略やソフトウェアの新機能について解説した。登壇した同社MATLAB 開発エンジニアリング担当バイスプレジデントのロイ・ルリエ氏は、注力する戦略として「どこでもMATLAB」「データ解析と機械学習」「プラットフォーム拡張」の3つを挙げる。
「MATLAB Anywhere」は、文字通り“どこでもMATLAB”を目指す構想だ。現在MATLABはPC上で動作するソフトウェアだけではなく、モバイル向けアプリも提供、加えてWebブラウザ経由での利用も可能になっており、クラウドを拠点に場所を選ばず利用できる環境の整備が進められている。
モバイルデバイス向け「MATLAB MOBILE」はコードを流す、プロットを見る、演算処理をするといった作業をモバイルデバイス上で行える。AppStoreとGooglePlayでは既に配信されており、デバイスに搭載されている加速度センサーや、GPSデータと連携させての解析も可能だ。
Webブラウザからアクセスできる「MATLAB Online」は、ローカルマシンにMATLABをインストールする必要なく、MATLABを利用できるサービスだ。主に学生向けに提供し、教育現場で使用されているという。
これらを結ぶ肝となるのが「MATLAB Drive」というクラウドテクノロジーだ。さまざまなデバイスを使用して作成したファイルは、すぐにMATLAB Driveにて同期され、別のデバイスでも利用することができる。さらに、処理能力の高いPCが必要とされた演算処理も、処理をクラウド側に投げる「MATLAB Parallel Cloud」を利用することで、処理能力の低いPCでも作業できる。なお課金は演算時間に対して行われる。
2つ目の戦略は「Data Analytics & Machine Learning」だ。R2015aでは分類学習、R2015bでは主成分分析への対応などデータの整理/分析に関する機能強化が進められており、現在ではMATLABに用意されている「Statistics&Machine Learning」ツールボックスを利用すると、データ整理の段階からMATLAB上で行い、そのデータを元にした予測モデルの作成までも可能だ。
「MATLABのデータ分析と機械学習を使えばコードの生成まで容易にできる。専門家でないアマチュアの方でも、簡単に使って頂けるようになるはず」(ルリエ氏)。
これらのツールも、クラウドを通じてさまざまなデバイスで利用できる。さらにR2015bではGPUアクセラレーションの機能拡張を行ったため、「最大40%のパフォーマンス向上につながった。自動車業界で推進されている自動運転などの分野でも、データ分析と機械学習の機能が有効に働くだろう」(ルリエ氏)。また、ディープラーニングを行う「Neural Network」ツールボックスの機能も追加されたとし、非常に大量のデータからもモデルを作成可能になったと説明した。
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