「家」を変えたサーモスタット「Nest」家庭内IoT標準化を巡る動向(前編)(2/3 ページ)

» 2015年05月21日 00時00分 公開

 Nest Labsは2014年6月に「Works with Nest」という開発者プログラムを発表し、APIを公開した。この発表よりも前から開発者プログラムは展開されていたのだが、Google買収後は、さらに注目度が増した。

 Works with Nestはさまざまな機器とNest製品を連動させるとともに、Nestが学習した情報をクラウドに蓄積・活用することによる機器間連携の実現を目的としたスマートホーム・プラットフォームだ。同社はこのプラットフォームについて、「“提供しうる最高のユーザー利益は何か”ということに着目しており、そのために誰にでも門戸が開かれた開発者プログラムとなっている。何かを構築したい人が好きなように構築できるようになっている」と説明している。

photo 「Works with Nest」のイメージ図

 本プラットフォームに参画している企業数は、Pebble(スマートウオッチ)、Jawbone(フィットネス向けウェアラブルデバイス)、Mercedes-Benz(クルマ)など含め50社を超えている。また、参画する企業を見てみると、かなりバラエティに富んでいることが分かる。では、これらの企業群がWorks with Nestに参画することで具体的にどのようなことができるのか。これらの企業の製品とNestが連携することにより、居住者が特段の操作をすることなく、自動で最適なタイミングで最適な動作を行うのだ。

photo International CES 2015に出展したWhirlpoolはNest連携をアピール。同展示会ではスマート電球やスマートロック等、Nest連携製品が多数出展されていた

 例えばMercedes-Benz(クルマ)で帰宅の途につくとそのGPS情報をもとに到着時間を算出し、居住者が帰宅するタイミングに部屋が適温になるよう逆算して空調設備を起動させることが可能になる。また、Whirlpoolの洗濯乾燥機と連動することにより、電気利用料金が最も安い時間帯で、かつ居住者が帰宅する前に洗濯機を回して乾燥させるだけでなく、乾燥終了後に衣類の重量で服がしわにならないようにするために時折ポンピングさせるといったようなことも可能だ。

 Jawboneの活動量計を腕に装着して睡眠を計測すれば、装着者のレム睡眠・ノンレム睡眠に関する情報を元に、起床時間に合わせて空調を動作させ、また起床するタイミングで部屋の明かりを自動的につけることもできるようになる。火災報知器のProtectが煙などを感知すると、LIFXのスマート電球が作動し、赤く点滅しながら外の人に火災が起こったことを知らせることもできる。

 このように、居住者の日々の行動や嗜好をNestが学習し、それに合わせてシームレスかつ自動的に他の機器も作動させることで、居住者にとって常に快適な環境が提供し続けることが可能となるわけだ。

 しかし、Nest Labsが目指す最終的な目的はスマートホームのプラットフォーム提供に留まらない。同社の本当の狙いは、家に関するあらゆるデータを収集することにある。Nestを通じて収集したデータは、米国政府の「家」に関する研究よりもはるかに多く、そのデータ量は「法律に影響を与えるほど」と表現される。Nest Labは収集したデータの利用目的について明言はしていないが、既に第三者との連携を実現したビジネスも存在している。

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