政府「ロボット新戦略」の実現に、官からの起爆剤を求める声もある。経産省所轄の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が手掛ける、ロボット革命実現に向けての取り組みを聞いた。
日本政府が2015年1月に発表した「ロボット新戦略」は、ロボット活用の技術的および規制面でのロードマップを示したが、民間企業の自発的な取り組みを尊重する意向もあり、政府としてのアクションについて具体的な言及は少ない。
しかし、サービスロボット市場やロボットの一般社会における活用という用途自体が未成熟である以上、“ロボット革命”実現のための起爆剤として、政府および関連省庁による具体的なアクションを求める声があるのも事実だ。
経済産業省所管の独立行政法人「国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構」(NEDO)は「ロボット活用型市場化適用技術開発プロジェクト」などの公募を通じ、ロボット新戦略を実現させるため民間企業および大学へ支援を行っている。ロボット新戦略の陰の立て役者ともいえるNEDOの取り組みについて聞いた。
ロボット開発に対しての政府支援はこれまでも行われていたが、多くの例では各省庁独自の視点で行われる傾向があった。NEDOでは“ロボット革命”実現にむけ、さまざまなニーズとシーズを融合させ、シナジー効果を高めることもミッションとして認識している。
「これまでのロボット開発はその多くが各分野での発展に貢献する所に留まっており、ロボット技術全般、ロボットシステムとしての発展に寄与してなかったと感じています。NEDOとしては、個々の技術開発ではなく、ロボットシステムの発展に寄与していきたいと考えています」
NEDOのロボット新戦略の実現にむけた姿勢についてこう説明するのは、ロボット・機械システム部 主査の萬木慶子氏だ。NEDOでは「実用化段階にある技術の導入加速」「ニーズに応える市場化技術開発」「広範囲で利用できる次世代ロボット技術開発」の3段階でロボット新戦略に取り組む。
「実用化段階にある技術の導入加速」については、NEDOが直接関与する事業ではなく、経済産業省直轄の事業であるが、「ロボット導入実証事業」として平成26年度補正予算に22億円が計上されており、ロボット技術が導入されていない分野へロボット導入を促進するための実証事業や実現可能性調査を後押しする。具体的には荷下ろし作業など、労働集約的作業へのロボット導入などが該当する。
NEDOでは5年後の2020年に「非製造分野でのロボット市場を20倍とする」ことを目標に掲げている。導入される業種業界として萬木氏は「介護医療や福祉の領域から広がっていくことになるとだろう」と予想するが、個人的な見解と前置きしながら、普及に際しての最大の障壁は“安全に対する考え方”かもしれないと言う。
法的規制は緩和すればいいが、“ロボットやロボット技術の導入で危険性が増すかもしれない”“ロボットに作業を任せると危ないかもしれない”という、ロボットへの不信感は一朝一夕に緩和できるものではない。特にエンドユーザーに近い所では、ユーザーの安全確保という観点から、神経質にならざるを得ない。その点で、“ロボットが身近にあること”を目指す、Pepperのようなコミュニケーションロボットへの期待は高いそうだ。
「(ロボットを使用することへの)不安感は、ロボット自体の露出数(ロボットを見かける機会)が増えないと変わらない。使われている状況を見ることで、安心感が生まれ、積極的に使ってみようという流れに変わっていくはず。コミュニケーションロボットの、メディア等を通じた露出が続けば、懸念される障壁は下がるものと期待している」(萬木氏)
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