NVIDIAは東京都内でGPUコンピューティングイベント「GTC Japan 2014」を開催した。基調講演では、同社の特別研究員であるDavid B. Kirk氏などが、GPUコンピューティングに関する最新のトピックスと、GPUを活用する未来についてのプレゼンテーションを行った。
NVIDIAは2014年7月17日、GPUコンピューティングイベント「GTC Japan 2014」(2014年7月17日、東京ミッドタウン)を開催した。基調講演では、同社の特別研究員であるDavid B. Kirk氏などが、GPUコンピューティングに関する最新のトピックスと、GPUを活用する未来についてのプレゼンテーションを行った。
最初にNVIDIAが提供しているGPUコンピューティング向け統合開発環境「CUDA」についての講演が行われた。現在、CUDAのダウンロード数は全世界で250万を突破し、対応するGPUは5億2000万個が出荷されているという。CUDAの最近の利用事例として、オーストラリアの無人消火飛行機の自動運転技術や、HIVの解析、乳がんの早期発見などが紹介された。
また、DNA配列の研究や、ニューラルネットワークを利用したロボットの適応型行動選択、生体軟組織の変形/破壊シミュレーションヘといった事例での利用も進められているという。
NVIDIAのGPUを搭載するハードウェア関連のトピックでは、サーバ用GPUアクセラレータ「Tesla K20X GPU」を搭載する、東京工業大学が開発したスーパーコンピュータ「TSUBAME-KFC」が、2014年6月に発表されたスーパーコンピュータの省エネ世界ランキングである「The Green 500 List」で1位を獲得した事例が紹介された。同ランキングでは、1位から15位までをNVIDIAのサーバ用GPUアクセラレータシリーズ「Tesla」を搭載するスーパーコンピュータが独占したという。また、同社のSoC(System on Chip)「Tegra K1」の登場により、デスクトップGPUとモバイルGPUのアーキテクチャが統合され、CUDAの全ての機能があらゆる場面で利用できるようになったという点もアピールされた。
次にコンピュータによる画像や音声などのパターン認識といった、機械学習の分野とGPUコンピューティングの関係についての紹介が行われた。Kirk氏によれば、2014年にはインターネット上にアップロードされる画像の枚数は1日当たり20億枚を突破すると予測されているという。そういった状況の中、コンピュータによる画像認識技術の1つとして、人間の脳のネットワークをコンピュータでシミュレーションする「ニューラルネットワーク」の研究が進んでいる。その情報処理の手段として、GPUコンピューティングが有効であるという事例が紹介された。
Googleは2012年に「Google Brain」と呼ぶニューラルネットワークの実験を行い、コンピュータにYouTubeの動画から猫を識別させることに成功している。このGoogleの実験では、1000台のサーバを使用し、2000個のCPUと1万6000個のプロセッサコアが利用された。一方、2013年にスタンフォード人工知能研究所が行ったニューラルネットワークの研究では、3台のサーバで合計12個のNVIDIAのGPUアクセラレータと1万8432個のGPUコアを利用し、Googleの結果を上回る実験成果を得ることができたという。消費電力とコストの面でも、Googleが600kWの消費電力と500万ドルの費用が掛かったのに対し、GPUを用いたスタンフォード人工知能研究所の実験では消費電力が4kW、コストは3万3000ドルに抑えることができたとしている。
また、米国の画像認識技術のコンペティションである「ILSVRC」では、年々GPUを利用するチームが増えており、2013年の大会では全種目においてGPUを利用したチームが優勝したという。Kirk氏は「こうした機械学習の研究においても、既に多くの企業でCUDAが利用されている」とアピールした。
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