見えてきた新型「コペン」のカタチ車両デザイン(1/3 ページ)

2014年6月の発売が決定したダイハツ工業の新型「コペン」。同年3月末の技術説明会に参加したプロダクトデザイナーの林田浩一氏に、注目を集める新型コペンが、どのような車両に仕上がるのかを分析してもらった。

» 2014年04月15日 11時50分 公開
[林田浩一/林田浩一事務所,MONOist]
ダイハツ工業の新型「コペン」

 2014年3月31日、ダイハツ工業が東京都内で開催した新型「コペン」の技術説明会に参加してきた。

 正式発売が同年6月予定ということもあり、会場に用意された量産仕様に近いと思われる試作車が装着するナンバープレートも、「東京モーターショー2013」の時の「KOPEN」から「COPEN」(どちらも発音はコペン)へと“市販仕様”の名称を掲げ、「間もなく市販」という感じを盛り上げている。

 技術説明は、同社技術本部 執行役員の上田亨氏と、新型コペンのチーフエンジニアである藤下修氏の2人により進められた。その模様は、既にMONOisitで公開されている記事をお読みいただくとして、本稿では展示されていたクルマや部品を見てのリポートとしてみたい。

「D-Frame」と「DRESS FORMATION」という成り立ち

 今回の新型コペン、プラットフォームは「ミラ イース」のものをベースに、クルマのキャラクターに合わせてミラ イースより225mmホイールベースを短くし、骨格+樹脂外板という特徴を屋根のないオープンカーボディで実現するために「D-Frame」と呼ぶ骨格構造を開発/採用している。

 クローズドルーフのボディであるミラ イースから単純に屋根を“切り飛ばす”と、構造体して成り立たなくなってしまう。このためオープンカーボディでは、さまざまな手法で補強が必要となる。新型コペンのD-Frameでは、車両全体を切れ目なくつなぐ構造とすることや、フロア下のトンネル部やクロスメンバーなどの補強を行うことで、初代コペンに対して、ボディ上下曲げ剛性が3倍、ボディねじれ剛性が1.5倍という大幅な向上を実現したという。

新型コペンの補強部位。左の写真では、赤色もしくは青色の部分が補強部位となっている。右側の写真は、鏡で車両の底部を映した状態。ボディ下面にも補強が施されていることが分かる(クリックで拡大)

 一方、クルマの購入後も内外装を脱着交換できる仕組みは、「DRESSFORMATION」と名付けられ、外装では電動オープンのルーフと左右のドアを除く一通りの樹脂外板が交換可能なシステムとして提供される。東京モーターショー2013でのプレゼンテーション時には、見る見るうちに数分でボディ外板が交換されていたが、量産車では当然そうはならず(取り付けの強度や盗難などのリスクからすると当然だが)、ボルトやクリップ止めを併用してしっかりとボディフレームに留められるようになっている。

 内装についても、運転席/助手席の加飾パネルやオーディオクラスタを交換できるとされているが、これくらいは好き者なユーザーの中には、他グレードの内装パネル類を買ってきて装着するとか、DIYで加飾するとかという人もいるので、新型コペンならではの特徴というには少々物足りない感じがするのは否めないところ。交換可能な外装パネルと比べると、「うーん、もうひと声!」という印象だ。

新型「コペン」の内装。技術説明会の際には試作段階であるため、質問などには答えられないということだったが、2014年6月発売ということから考えるとほぼこのままであろう。樹脂部品はシボなし段階のものが装着されていた(クリックで拡大)
新型「コペン」の骨格 新型「コペン」の骨格

 今回の技術説明会では、車両として組み上がった状態のものと、フレームの両方が展示されていた。しかし、下の写真にあるような、タイヤと一部のボディパネル以外何も付いていないフレームを見ると、クルマの外装のほぼ全てが交換可能であることがよく分かる。ここにボディパネルをボルトで装着していくとクルマとしての姿が浮かび上がることを想像すると、気軽に組み立てられる大き目のプラモデルのようにも見えてくる。そういう根拠のない「手軽そう」という感覚は、軽自動車という小さな車体の持つ強みの1つなのかもしれない。

ほぼ全部交換できるボディパネルからの可能性

 藤下氏からは、「ボディパネルを『ほぼ全取っ替えできる』ということもあって、街のクルマ屋のオヤジさんから『オリジナルのクルマを作る夢が叶う』と期待の声を掛けられた」というエピソードも披露されていた。

ダイハツ工業の藤下修氏 ダイハツ工業の藤下修氏

 この話を聞いたとき、確かにカスタムカーという分野で見ると、それこそ“切った貼った”でオリジナルボディを作り出してしまうようなショップは現状でも存在する。しかし、そこまでのレベルを求める顧客を対象にするわけではないけれど、自店の売り・特色として他店では手に入らないクルマを商品として持ちたいというカーショップなどはありそうだと感じた。

 そういったところでも、オリジナルのボディパネルさえ作れれば、あるいは作らないまでも市場に出てきたパネルを組み合わせて、セレクトショップ的なセンスを発揮することで「オリジナル車」を商品として持てるという可能性は、魅力に感じるかもしれない。

 メーカー側としても、バリエーション展開のしやすいベースを用意できたとも言えるわけで、東京モーターショー2013で展開した2タイプの他にどのような展開をしてくるだろうかと、フレームを見ていると想像が拡がる。新型コペンというクルマについては、交換可能な外装システムは樹脂外板のみに限られるが、メーカー自身がやるとなるとヘッドランプやルーフ周りにまで範囲を広げることは難しくないわけで、現在提示されている新型コペンとは異なる見た目のクルマも短期間で作れそうだ。

 筆者自身も、フェンダーをワイドなものにして、排気量1l(リットル)くらいのエンジンを積んだ普通車仕様もすぐに作れそうだなぁとか、電動ルーフをごっそり取ってしまえば、かつてあった「smartロードスター」と「smartクーペ」みたいな兄弟車みたいなのも比較的簡単に作れそうだとか、あまり低くないフロントフードの高さを見ながら、ピックアップトラックみたいなボディに仕立てるのも面白いかもとか、本題の新型コペンそっちのけでしばしの間いろいろと想像していた(ナンバープレートが白になっても、単純にワイドボディ化したコペンを作ってみるというのは、アフターマーケット市場では早々に出てきそうな感じでもあるが)。

 交換できる樹脂外板構造とともに、東京モーターショー2013でアナウンスされていた、アフターマーケットやクリエーターなどへの車両情報開示についても動き始めている。コペン公式サイトを通じてダイハツ工業とコンタクトを取り、個別に情報開示や契約の内容を取り決めていく形をとっている。

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