ビッグデータで需要急変時の最適モデルを予測――富士通研が制御技術を開発製造ITニュース

富士通研究所は、複数の長期的な予測シナリオに基づいて計画を逐次修正し、急激な需要変化に対応可能なサプライチェーンマネジメント(SCM)向けのモデル予測制御技術を開発した。

» 2014年03月10日 13時00分 公開
[三島一孝,MONOist]
bigdata

 富士通研究所は2014年3月7日、複数の長期的な予測シナリオに基づいて計画を逐次修正し、急激な需要変化に対応可能なサプライチェーンマネジメント向けのモデル予測制御技術を開発した。同技術の活用により、予測の不確実性も組み込んだ形での最適な計画立案が可能になるという。

 最近は、商品の販売情報などに加え、ソーシャルメディアやセンサーデータなどをリアルタイムに収集、蓄積、分析するツールが整備されていることで、ビッグデータの活用が進んでいる。需要予測などについても適用が進んでいるが、特価セールや競合製品の状況などで需要が急変動するケースが多く「変化を考慮した高精度の予測」については、難しい状況が続いていた。

 今回、富士通研究所が開発した技術は、モデルの不確かさを考慮した上で、刻々と変化する状況に応じて最適な制御を行うモデル予測制御技術だ。これまでに蓄積したモデル予測制御技術を適用し、サプライチェーンの小売業において、急激な需要の変化に対応しながら、在庫保有コストや在庫切れなどによる機会損失を考慮した、トータルコストを最小とする発注計画の立案を実現する。

  1. 各発注時において、出荷量制限、納期、賞味期限などさまざまな制約条件の下で、在庫保有コストや在庫切れなどによる機会損失などのトータルコストを最小とし、かつ利益を最大にするような設定で最適化計算を行うことで、最適な発注量を決定
  2. 逐次修正される需要予測に基づいて一定期間先までを対象に発注量を最適化
  3. ビッグデータにより得られた複数の長期的予測シナリオを考慮して最悪ケースでも損失を抑え、利益が最大化する発注量を計算

 これらの1〜3の予測・最適化のプロセスを繰り返していくことで、従来困難であった、予測の不確かさを考慮しながら需要の急な変化などに対応した最適な発注計画の自動立案を可能としているという。

モデル予測制御技術による在庫最適化 モデル予測制御技術による在庫最適化のイメージ図

 同技術には、与えられたルールに従い、可能な限り良い解を求める「数理最適化」と呼ばれる計算技術を活用。トータルコストの取り方や制約条件を適宜変更することで、対象製品のさまざまな発注計画立案に柔軟に対応することが可能だという。

 実際に小売店の実データを使って発注計画立案に適用した検証では、約90店舗のケースで約60週間分で、1店舗を除いた全ての店舗で利益が増加したという。

 今回発表した、モデル予測制御に基づく最適化技術は、今後、予測・最適化プラットフォームへ搭載し、ビッグデータに関する製品・サービス群を体系化した「FUJITSU Big Data Initiative」のオファリングメニューとして適用していく予定だとしている(関連記事:サプライチェーンの需要予測やM2Mでのビッグデータ活用を容易に――富士通)。

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