身の回りのあらゆるモノがネットワークを介して接続され、相互連携する世界、“モノのインターネット(IoT:Internet of Things)”。小さなセンサーデバイスはもちろんのこと、自動車や白物家電、そして、“お弁当箱”までもがネットの世界と融合していく……!?
2015年までに、150億台ものデバイスがネットに接続される――。PC/サーバやスマートフォン、タブレット端末だけでなく、身の回りにある、あらゆるモノがネットワークを介して接続され、相互連携する世界が訪れようとしています。いわゆる“モノのインターネット(IoT:Internet of Things)”の到来です。
小さなセンサーデバイスは当然のこと、自動車や白物家電、そして、“お弁当箱”までもがネットの世界と融合していくわけです……。
そう……。これは決して冗談などではありません。「現実」なのです。まずは、以下の動画をご覧ください。
普段、品質や耐久性などを厳しく問われる組み込みエンジニアの皆さんからしたら、「おいおい(笑)」というツッコミがあるかもしれません(きっとあるでしょう)。しかし、そんなことはお構いなしで、この“次世代お弁当箱”を製作した集団が現実にいるのです。彼らの名は、マインドフリー。Web関連技術を強みとする企業です。一体なぜ、彼らはお弁当箱をこんな風に仕上げたのでしょうか……。
というわけで、同社 取締役 テクニカルプロデューサーである北口真氏にお時間をいただいたので、その辺の話をざっと伺ってみました。
MONOist編集部(以下、MONOist) えー。どこからツッコんでいいのか分かりませんが……(笑)。
北口氏 このお弁当箱、「オベントーバコラー」というのですが、詳細を説明する前に、なぜこのようなカタチに行き着いたのかを説明させてください(笑)。
当社は、Web周りの技術やモバイル関連の技術に強みを持つ企業です。今から2年ほど前からでしょうか。「リアルタイムWeb」というキーワードの下、JavaScriptの一種で、サーバサイド実装言語である「Node.js」や、もともとHTML5の仕様の一部として策定されたサーバ/クライアント間の双方向通信技術「WebSocket」のようなステートフルな通信を実現する技術にいち早く注目し、HTML5の世界で、リアルタイムWebアプリケーションを実現することに注力し始めました。プラットフォームに捉われず、専用アプリケーションをダウンロードすることなく、Webブラウザさえあれば、リッチなアプリケーションを実現できる点が魅力ですね。
そこで生まれたのが、2台の「iPhone」でリアルタイム同時対戦が可能な野球盤Webアプリ「Handy Stadium」、1対Nによる大人数での同時通信処理を実現したWebビンゴゲーム「MAGICAL BINGO COCORO」。そして、リアルタイムWebの1つの表現として、ブログ記事の執筆・編集過程をリアルタイムに反映させるブログエンジン「REABLO」です。このように、最新のWebテクノロジーを活用しながら、研究開発を進め、いろいろな成果を少しずつ出せるようになってきました。
MONOist Web技術、とりわけ“リアルタイムWeb”というものに注力してきたところで、なぜ、お弁当箱(モノ)をWebの世界につなげようと思ったのでしょうか?
北口氏 近い将来、Webブラウザはコンピュータの“プラットフォーム”として、現在のOSと同じような役割を担うことになるといわれています。そうした中、従来のPCやスマートデバイスの世界だけでWebサービスやアプリケーションを提供していくのではなく、そこに“モノ”を組み合わせることで、新しい“ユーザー体験(UX:User Experience)”を利用者に提供できるのではないかと考えました。Web技術に注力する立場から考えたIoTですかね。そして、そんな思いを後押ししてくれたのが、「Arduino(アルドゥイーノ)」のようなオープンソースハードウェアの存在でした。
MONOist これまでWeb技術中心で事業展開されてきたようですが、ハードウェア設計や組み込みソフトウェア開発の経験はあったのでしょうか?
北口氏 いわゆるデバイス開発のようなことは一切経験がありませんでした。ただ、私たちの強みでもあるWebSocketに関する技術は、ロボット制御などの世界でも注目されているようで、そうした世界の人たちと交流する機会がありました。こうした出会いを機に、少しずつですがハードウェアの勉強をし、チャレンジすることにしたのです。それが今から半年くらい前ですかね。
実際、Arduinoのようなオープンソースハードウェアの“ビッグウェーブ”が来ているなという感覚を持っていたのと、「Arduino+WebSocket+Node.js」といったキーワードで調べてみると、同期やリアルタイム通信といった観点では、世の中的にまだあまり活用されていないなという印象でした。だから、これなら自分たちでもやる価値があるし、何らかのプロダクトを作ってみたいという思いが強くありました。
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