昨今の自動車メーカー間による燃費競争では、自動車のあらゆる構成部品で生じている損失を取り除くことが求められています。
その中で注目されているのが、次回取り上げる予定のオルタネータ(発電機)の回転抵抗です。オルタネータは、発電する際に電気的な抵抗を生じるので、不要なときは発電しないように制御すれば燃費を向上できます。
従来、自動車を運転している間の鉛バッテリーの利用法といえば、常に発電機を回して充電電流を流し、満充電に近い状態を維持し続けるというイメージが一般的でした。しかし、最近の自動車はバッテリーセンサーを使用して、電圧や温度などを監視することにより、オルタネータの動作を細かく制御できるようになりました。その半面、一定水準まで電圧が低下してからオルタネータで急速に充電するという、鉛バッテリーにとっては過酷な使用環境になっていることもあり、充電回復性能が高い鉛バッテリーが必要になります。
そこでメーカー各社は、それぞれ工夫を施して充電回復性能を向上させた鉛バッテリーを積極的に展開しています。例えば、パナソニックの「カオスバッテリー」などがあります。
充電制御に対応した鉛バッテリーを使用しなければ、寿命が短くなる上に、せっかく充電制御が行っても性能回復に時間がかかるため燃費が悪化する原因にもなりえます。
従来、自動車の利用スタイルとして、エンジン始動(クランキング)は運転前に一度行うだけのものでした。大電流の出力を求めるクランキングは、自動車用の鉛バッテリーにとって最も過酷な使用方法の一つと言えます。
しかし、最近になって数多くの車種が市場投入されるようになっている、燃費の向上や排気ガスの抑制を主目的とするアイドルストップ機能を装備した車両の場合、クランキングは1回だけでは済みません。アイドルストップ機能が、赤信号などで停車してから再度発進するたびにエンジンの停止と再始動を繰り返すことを考えれば、クランキングの回数は従来とは比較にならないほど多くなります。
その上、エンジンを停止している最中であっても、自動車の唯一の電力源である鉛バッテリーは、カーエアコンやカーナビゲーションなどの電装部品を動作し続けるために電力を供給しなければなりません。アイドルストップ機能が鉛バッテリーに与える影響は極めて大きいのです。
アイドルストップ機能を搭載する車両に既存の鉛バッテリーを用いると、クランキング中に急激に硫酸鉛へと変化した極板を、充電によって元の二酸化鉛と鉛に回復させる間もなく、次のクランキングが行われるという使用条件に耐えられません。最終的に極板が腐食して、想定よりも早期に寿命を迎えることになります。
そこで、従来とは根本的に使用条件が異なることを前提に、極板に使用する合金を見直した、アイドルストップ機能搭載車専用の鉛バッテリーが開発されました。外見からは従来の鉛バッテリーと同じように見えますが、バッテリー形式はJIS規格(JIS D5301)ではなく、電池工業会が定める新しい規格(SBA S0101)に沿ったものに変更されています。意外と知られていませんが、販売価格もかなり高額になっています。
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